標準情報(TR)    TR X 0056:2002


XHTMLのモジュール化

Modularization of XHTML



序文

この標準情報(TR)は, 2001年4月にWorld Wide Web Consortium(W3C)から公表されたModularization of XHTML 勧告を翻訳し, 技術的内容を変更することなく作成した標準情報(TR)である。



1. 導入

1.0. 適用範囲

この標準情報(TR)は,XHTMLの抽象モジュール化を規定し, XMLの文書型定義(DTD)による抽象化の実装を規定する。このモジュール化は, XHTMLをサブセット化し拡張するための手段,つまり, 今後のプラットフォームに対するXHTMLの支援への拡張に必要な機能を提供する。

1.1. XHTMLの概要

XHTMLは,XMLのアプリケーションとしてHTML 4を再定式化する。XHTML 1.0[XHTML1]は,HTML 4の三つの文書型 Strict, Transitional及びFramesetに対応する三つのXML文書型を規定する。XHTML 1.0は,HTMLをサブセット化し拡張する文書型ファミリの基本とする。

1.2. XHTMLモジュール化の概要

XHTMLのモジュール化は,機能の特定な型を提供する抽象モジュールの集合にXHTML 1.0 (及び参照によってHTML 4)を分解する。これらの抽象モジュールは,この規定においてXML文書型定義言語によって実装されるが,XMLスキーマによる実装が期待される。抽象モジュールを定義する規則, 及びXML DTDを使用してそれらを実装する規則も, この規定で定義する。

XHTMLサブセットを生成し, 文書型のXHTMLファミリのメンバとしての資格のある拡張文書型を生成するために, これらのモジュールを互いに結合したり,他のモジュールと結合してよい。

1.3. XHTMLをモジュール化する理由

XHTMLのモジュール化は,XHTML要素の正しく定義された集合を指定するタスクを参照する。これらの集合は, 内容開発者がより多くの多様なプラットフォーム上に内容を配布することを経済的に実現可能にするために, 文書作成者,文書型設計者,その他のXML規定内容,並びにアプリケーション及び製品の設計者によって, 組み合わされ拡張されることができる。

ここ数年来,多くの専門化した市場は, HTMLを内容言語として注目し始めてきた。ますます多様化するコンピュータプラットフォームにわたって,HTMLを利用する方向への大きな動きがある。最近,携帯コンピュータなどのモバイル装置,デジタルテレビ, TVベースのウェブブラウザなどのテレビジョン装置,及び専用機能装置などの家電にHTMLを導入する活動がある。これらの装置にはどれも, 異なる要件及び制約が存在する。

XHTMLをモジュール化することは,標準的なビルディングブロックを用い, どのビルディングブロックを使うかを指定する標準的な手法を用いている装置によって, どの要素がサポートされるかを製品設計者が指定する手段を提供する。 これらのモジュールは, 内容のコミュニティに関する"適合性のポイント"として動作する。内容のコミュニティは,XHTML要素の様々な並びをサポートする組込み基盤を懸念するのではなく,モジュールの集まりをサポートする組込み基盤を対象とすることが今では可能である。 規格の使用は,モジュール化されたXHTMLが広範囲に成功するための鍵となる。 内容開発者が,XHTML要素のすべての並びに内容を合わせることは,経済的に実現できない。規格を指定することによって,ソフトウェア処理が自動的に内容を装置に合わせることができるか,装置がモジュールの処理に必要なソフトウェアを自動的にロードできるかのどちらかとなる。

モジュール化は, XMLの拡張性を使用して,XHTMLの規格に反することなく, XHTMLのレイアウト機能及び表示機能の拡張を可能とする。この開発のパスは,ウェブの急速な技術変化を管理するために, 安定で有効な実装可能な枠組みを内容の開発者及び出版者に提供する。

1.3.1. 抽象モジュール

XHTML文書型は,抽象モジュールの集合として定義される。抽象モジュールは, 意味的に他のすべてと異なる一種のデータを定義する。モジュールを定義する基本的なスキーマを深く理解することなく,抽象モジュールを組み合わせて文書型にすることができる。

1.3.2. モジュールの実装

モジュールの実装は,要素型の集合,属性リスト宣言の集合,及び内容モデル宣言の集合から構成されるが,これらの三つの集合は空集合でもよい。モジュール内の属性リスト宣言は,モジュールで定義された要素型でないものに要素型を変更してよく,内容モデル宣言は,モジュールの要素型集合でないものに要素型を変更してもよい。

一つの実装機構が, XMLのDTDとする。XMLのDTDは,XML文書のクラスの構造を記述する手段であり,まとめてXML文書型として知られている。XMLのDTDは,XML 1.0勧告[XML]に示されている。もう一つの実装機構は, XMLスキーマ[XMLSCHEMA]とする。

1.3.3. 混成文書型

混成文書型は,XMLのDTD又はDTDモジュールの集合から構成される文書型とする。この標準情報(TR)に規定されるモジュール化の枠組みの主な目的は,DTDの作成者が,複数の抽象モジュールからの要素を組み合わせて混成文書型にしたり,その混成文書型に対して文書を開発したり,関連する混成文書型定義に対してその文書の妥当性を検証することを可能にすることとする。

XMLの利点でSGMLを越える最も価値のあるものの一つに,XMLが, コミュニティに対して相互運用可能なフォーマットでデータを交換可能にする, 要素集合の標準化への推進に対する障壁を削減することがある。しかし,ウェブの内容言語としてのHTMLの比較的静的な性質は, これらのコミュニティのどれもが,そのXML文書型がウェブ規格の一部として広く採用され得るという希望を以前は主張できなかったことを意味してきた。モジュール化の枠組みは,文書型のXHTMLファミリの中へのこれらの多様な文書型の動的な組込みが,さらに,XHTML文書におけるこれらのドメイン固有の語彙の組込みに対する障壁をさらに削減することを可能にする。

1.3.4. 妥当性検証

整形式だが,妥当ではない文書の使用は,XMLの重要な利点を与える。しかし,文書型を開発する過程では,エラー検査のための妥当性検証パーサが提供する追加の手段が重要となる。同じことが, 複数の抽象モジュールからの要素をもつXHTML文書型に対してもいえる。

文書は,文書のプロログで識別されるDTDが定義する一つの特定の文書型のインスタンスである。文書の妥当性検証は,文書が文書型定義の規則に適合することを検査する処理をいう。

一つの文書は, 複数の文書素片から構成できる。各素片が文書中の他の素片とは異なる文書型をもつ文書において,文書の素片だけを妥当性検証することは,この枠組みの適用範囲を超えている。これは,未定義の技術を必要とするためである。

しかし, モジュール化の枠組みは,複数の文書型定義に対して統合化され,新しい文書型を形成する(例えば,SVGをXHTMLに統合化する)ことを可能にする。新しい文書型定義は, 通常のXML 1.0の妥当性検証に使用できる。

1.3.5. フォーマット化モデル

HTMLの初期の版は,文書をフォーマットする際に,利用者エージェントが用いる必要のあるモデルの一部を定義することを企てた。HTML 4の出現によって,W3Cは, 構造から表示を分離する処理を開始した。XHTML 1.0はこの分離を支持し,この規定は,HTML及びその後継をこの道に沿って移し続けている。したがってこの規定は,XHTMLファミリ文書型でマーク付けされた文書の表示に関連するフォーマット化モデルを全く必要としない。

代りにこの規定は,内容作成者が, その内容のフォーマット化モデルを定義するために,CSSなどのスタイル機構に依存することを推奨する。利用者エージェントがスタイル機構をサポートする場合,文書は要求されたフォーマットになる。利用者エージェントがスタイル機構をサポートしない場合,文書は, その利用者エージェントに適切なフォーマットになる。これによって,XHTMLファミリの利用者エージェントは,豊富なフォーマットが適切な装置ではそのフォーマット化モデルをサポートすることが可能となり,簡素なフォーマット化が適切な装置ではそのフォーマット化モデルをサポートすることが可能となる。