標準情報(TR)    TR X 0093:2003

同期化マルチメディア統合言語 (SMIL 2.0) 解説



1. 公表の趣旨及び経緯

INSTACの次世代コンテンツの標準化に関する調査研究委員会(NGC)は, SMIL及びSVG関連技術の標準化動向に着目して調査研究を行ってきた。W3Cが, 2001年8月にSynchronized Multimedia Integration Language (SMIL 2.0)[1]の勧告を公表し, 2001年9月にSMIL Animation[2]及びScalable Vector Graphics (SVG) 1.0 Specification[3]の勧告を公表すると, 同委員会は直ちにその内容レビューを行い, それが携帯端末等のコンテンツ記述に極めて重要な技術であるため, 標準情報(TR)として国内に示す必要があることを報告した。

さらに同委員会は, 2002年度の活動としてこれらのTR原案作成を計画し, 作業グループWG3がこの作業を担当した。WG3は, Synchronized Multimedia Integration Language (SMIL 2.0)を翻訳し, 2003年1月にSMILアニメーションのTR原案を完成して, 経済産業省産業技術環境局に提出した。


2. 審議中の主要検討課題

2.1 主な訳語

採用した主な訳語を解説表2.1に示し, 今後の関連規定の作成等に際しての参考とする。 訳語の選定に際しては, TR X 0014:1999 同期化マルチメディア統合言語(SMIL) 1.0[4]との整合に配慮した。

解説表2.1 訳語一覧
原語訳語
acceleration rate加速率
acceptable受理可能な
accessibilityアクセス可能性,アクセシビリティ
accumulated progress蓄積進行状況
activation活性化
active duration活性持続時間
active time活性時間
actuate作動する
additive加算(的)
additive animation加算的アニメーション
addressingアドレス付け,アドレス指定
advance(時間が)経過する,進行する
ancestor region先祖区域
animateアニメーション化する
animationアニメーション
animation sandwich modelアニメーションサンドイッチモデル
approarchアプローチ
arc
area領域
arithmetic算術,算術計算
ascendant time先祖時間
ascendant time container先祖時間コンテナ
audiences聴衆
audio音声
audio resources音声資源
audio track音声トラック
audio volume音量
author制作者
authoring制作
authoring considerations制作上の考慮
auto-reverse自動反転
average rate平均進度
average rate of progress平均進行率
back-propagate逆伝播
base基底
base value基底値
baseline基本線
basic markup基本マーク付け
Basic profileBasicプロファイル
begin time開始時点
bit-depthsビット深さ
bitrateビット率
boolean論理値(の)
broadcast放送,ブロードキャスト
bubbleバブル動作する
bubblingバブル動作
bullet箇条記号,黒丸
calculation mode計算モード
capability能力
capable能力のある
captionキャプション
cascaded apeed縦続速度
chain連鎖
characteristics特質
choosing選択
clamp強制的に固定する
clearクリアする
clickクリックする
clickabilityクリック可能性
client applicationクライアントアプリケーション
clipクリップ
clock value時計値
closed-captioningクローズドキャプション付け
color
color depth色の深さ
color palette色パレット
combine組み合わせる,結合する
common parent共通の親
comply with準拠する,従う
computation計算
computing environment計算環境
conformance適合性
congestion混雑
constraint制約
construct構成要素
content-negotiation内容折衝
continuous media連続メディア
contraint制約
creator作成者
crossfadeクロスフェード(する)
cubic Bezier spline3次のBezierスプライン
cumulative animation累積アニメーション
cut(画面の)カット
decelerate減速する
deceleration rate減速率
definite time確定した時間
deliver配送
delta差分
dependents従属する要素
descendent region子孫区域
designator指定子
desired begin要望的開始点
desired duration要望的持続時間
desired end要望的終了点
destination到達先
destinationリンク先
detecting cycle循環性の検出
deterministic schedule決定論的スケジュール
discrete interpolation離散補間
discrete media離散メディア
disjoint互いに素な
display form表示形式
displaying表示する
distinguishing区別
document begin文書開始点
document duration文書持続時間
document end文書終了点
document time文書時間
DOM Level 1DOM水準1
DOM operationDOM操作
domainドメイン
ease-in, ease inイーズインする(ゆとりをもって現れる)
ease-out, ease outイーズアウトする(ゆとりをもって消える)
edge
effect効果
effective実効的
effective begin実効開始点
effective duration実効持続時間
effective end実効終了点
element time要素時間
element-local要素局所
Embedded Documents埋込み文書
embedded HTML page埋込まれたHTMLページ
embedded object埋込みオブジェクト
end終了点,終了する
end time終了時点
end-point exclusive終了点除外の
end-to-end終了点間
evenly paced interpolation均等配分された補間
event activationイベント活性化
event sensitivityイベント感度
eventbaseイベント基底
event-basedイベントに基づく
event-based timingイベントに基づくタイミング
explicit begin明示的開始点
explicit duration明示的持続時間
explicit end明示的終了点
facility機能
fadeフェード(する)
fallback後退(する)
fast-forwarded早送り
fetch取ってくる
fetching取得
filtered timeフィルタされた時間
fly inフライインする(飛び込む)
following次の
fragment part素片部分
freezing animationアニメーションの凍結
function関数
functionality機能
global time大域的時間
guidance手引き
guidelines指針
handling処理
hard sync厳密な同期
hierarchical region layout階層的区域レイアウト
host documentホスト文書
host languageホスト言語
HTML plug-inHTMLプラグイン
hyperlinkingハイパリンク付け
hyperlinking semanticsハイパリンク付けセマンティクス
image画像
implicit begin暗黙的開始点
implicit duration暗黙的持続時間
implicit end暗黙的終了点
in bitsビット単位で
inactivate非活性化する
indefinite不定の
indeterminate schedule非決定スケジュール
indeterministic schedule非決定論的スケジュール
indexインデクス
informative参考(の)
inline行内
in-line行内(の)
instance timeインスタンス存在時間
integer value整数値
integrating nature統合された性質
interactive相互作用的(な),対話型
interactive timing対話型タイミング
intermediate中間生成される
interpolation補間
interrupt semantics割込みセマンティクス
intrinsic本来的
iteration反復
keep維持する
keyboard focusキーボード注目点
language matching言語一致,言語照合
language objects言語オブジェクト
layoutレイアウト
lazy interaction怠惰な相互作用,怠惰な対話
leaf
life cycleライフサイクル
linear interpolation線形補間
linear media element線形メディア要素
linear media player線形メディアプレーヤ
linguistic preference言語の好み
link activationリンク活性化
link elementsリンク要素
linkingリンク付け
listenerリスナ
local time局所的時間,現地時間
locators位置指定子
looser大雑把な
maintain保持する
manipulate操作する
map対応付けする,対応付ける
mapping対応付け
matrix行列
mechanism機構
media elementメディア要素
media markerメディアマーカ
media objectメディアオブジェクト
media playerメディアプレーヤ
media serverメディアサーバ
media timeメディア時間
media-typeメディア型
mention言及する
metainformationメタ情報
modifier修飾子
moduleモジュール
motion動き
motion animation動きアニメーション
motion path動き経路
mouse containmentマウス封込め
movie映画
multi-element transition複数要素の遷移
multiple description scheme複数の記述方式
multiple top-level window複数の最上位ウィンドウ
mutation変異
name fragment identifiers名前素片識別子
naming conventions命名規約
navigational linksナビゲーションのリンク
negotiation折衝
net cascaded speed実質(の)段階的速度
net effect実質(の)効果
non-negative value非負値
non-SMIL非SMIL
normal play順方向再生
offsetオフセット,ずらす(動詞の場合)
open cycle開いたサイクル
original value元の値
overdub吹替え
overlap重なり合う
pace変化率
paced一定変化率(の)
paced interpolation一定変化率(の)補間
pacing変化率
paintペイントする
parent geometry親ジオメトリ
parent node親ノード
parent time親時間
parse構文解析する
parsed entity構文解析済み実体
parser構文解析プログラム
path経路
pause一時停止する
peer同時(化の)
percentageパーセント
per-element model要素ごとのモデル
performance性能,動作
pixel value画素値
placement配置
play再生する
play backward逆方向再生
play forward順方向再生
playback再生
playerプレーヤ
plug-insプラグイン
polybezier複数Bezier
positioning位置決め
predefined定義済み(の)
prefetch先読みする
preliminary active duration time仮の活性持続時間
present提示する
presentation optimizationプレゼンテーション最適化
presentation valueプレゼンテーション値
priority優先度
produce生成する
profileプロファイル
progress進行状況
progression進行
propagation伝播
property特性
pruning切詰め
pulsing脈動する
pulsing点滅化
qualify限定する
quantity(数)量
queue待ち行列
raise(アニメーションなどを)起動する
random-access mannerランダムアクセス方式
rate率,進度
rate of progress進行率
rate of time時間の進度
real-world issues現実世界の課題
recursion再帰
rederレンダリングする
reflect反映する
region fit override区域適正の上書き
registration points登録点
relative toを基準にして,に関係して
released解放する,公開する
remove削除する,取り除く
rendererレンダリングする処理系
repeating behavior繰返し振る舞い
repetitions繰返し
replacement置換え,置換
re-purpose目的を変える
requirement要件
reset再設定(する)
resolutions解像度
resolve解決する
resolving times時間の解決
restart再始動する
restart semantics再始動セマンティクス
resulting(結果として)生じる
resume再開する
returned返却値の,返された
reverse play逆方向再生
revert復帰する
root layoutレイアウトの始まり
rules規則
run動作する
run rate動作率
runtime実行時
sampled標本化された
sampling標本化
scalability変倍可能性
scale拡大縮小する,大きさ
scenarioシナリオ
scheduleスケジュール(の)
schedule timingスケジュールタイミング
scheduled timingスケジュールされたタイミング
schedulerスケジューラ
scope有効範囲
screen-heightスクリーン高
screensスクリーン
screen-widthスクリーン幅
seek探索(する)
segment区分
semanticsセマンティクス
sensitive感度の高い,高感度の
sensitivity感度
sequence列,シーケンス
sequence time containerシーケンス時間コンテナ
shorthand簡略(記述)
sibling region兄弟区域
simple duration単純持続時間
simple time単純時間
single parent単一の親
single-headed links単一リンク先のリンク
slide showスライドショー
slipずれがある
slip syncずれがある同期
SMIL BasicSMIL Basic
SMIL browserSMILブラウザ
SMIL FragmentsSMIL素片
SMIL playback engineSMIL再生エンジン
SMIL plug-inSMILプラグイン
SMIL Time ModelSMIL時間モデル
soft sync厳密でない同期
solid color無地の色,塗りつぶす色
sourceリンク元,到達元,源
speed control速度制御
splineスプライン
stack levelスタックレベル
start始動(する)
state状態
stock tickers株式相場表示装置
stratup始動(する)
streaming mediaストリームメディア
streaming videoストリームビデオ
string value文字列値
sub-region下位区域
subset部分集合
subtitle字幕
supportサポートする,サポート,支援する,支援
switch切り替える
sync arc同期弧
syncarc-value同期弧(sync-arc)値
syncbase同期基底
syncbase-value同期基底(syncbase)値
synchronization arc同期弧
synchronization elements同期要素
synchronization relationship同期関係
synchronization slew同期変化
Synchronized Multimedia Integration Language 同期化マルチメディア統合言語
syntax error構文エラー
synthetic合成的
target elementターゲット要素
taxonomy分類
temporal時間的
test試験する
test attribute試験属性
time container時間コンテナ
time filter時間フィルタ
time graph時間グラフ
time line時間軸
time manipulation時間操作
time model時間モデル
time model semantics時間モデルセマンティクス
time value時間値
timebase時間基底
time-based時間に基づく
timed時間付け(された)
timed document時間付け文書
timespace conversion時間系変換
timestampタイムスタンプ
timingタイミング
timing modelタイミングモデル
timing semanticsタイミングセマンティクス
timing specifiersタイミング指定子
toggle切替え
tool tipツールティップ
top最上位
top node最上位ノード
track(マウスの位置を)追跡する
transition effect遷移効果
underlying value基礎値
uni-directional一方向
unify統一する
unresolved未解決の
unwoundほどけた(状態)
user利用者
user group利用者グループ
user interface利用者インタフェース
user preference利用者の好み
UTC協定世界時
variant変形
vector graphics幾何図形
vector media幾何メディア
videoビデオ
visual browser視覚化ブラウザ
wallclock掛け時計
web-enhanced mediaウェブ拡張メディア
white space空白
windowウィンドウ
wipeワイプ
XML-based languageXMLに基づく言語
yield産出する

2.2 章・節などの構成

W3Cの規定は, 必ずしもJIS又は標準情報(TR)の様式には整合していないため, 整合化の対応が必要である。しかしTRの読者が原規定を参照する際の便を考慮すると, 章・節構成はなるべく原規定のそれを保存することが望まれる。そこで, 次に示すだけの修正(章・節番号の変更なし)を施して, この標準情報(TR)を構成した。

2.3 W3Cからの要求

この標準情報(TR)の公表に際して, W3Cから和文及び英文による次の記載を求められている。この記述は原規定にはないため, ここに示して, W3Cの要求に応えることとする。

規定に準拠しているかどうかの基準となる版は, W3Cのサイトにある原規定とする。

この標準情報(TR)は原規定と技術的に同一であることを意図しているが, 翻訳上の誤りはあり得る。

The normative version of the specification is the English version found at the W3C site.

Although this TR is intended to be technically identical to the original, it may contain errors from the translation.


3. 懸案事項

3.1 W3Cへのフィードバック

翻訳作業の過程で原規定における問題点の幾つかが明らかになっている。W3Cでの次版への検討のために, これらの問題点をW3Cに提出する。

3.2 SMIL 'a'プロファイル

NGC/WG3は, Glocom/WWVIと協調してDeskTop Broadcastに必要なSMIL 'a'(IP-cast SMIL Integration)プロファイルの検討を行ってきた。その概要を次に示す。

a) 背景

既存のテレビ放送業者, データ放送業者などを含むコンテントプロバイダは, コンテンツ配信の方法として, インタネット及びIPマルチキャストのネットワークに注目している。その目標を実現するために, アナログ放送の枠組みでのデータ放送, CS放送を利用したコンテンツ配信, BSディジタル放送などが試みられている。近年, ディジタル放送, IPマルチキャストなどの異種サービスの間で共有できる共通の集約プラットフォームの必要性が認識されている。

ここではそれらのプラットフォームのサービスに向けたSMIL応用技術(SMIL 'a'プロファイル)を示す。

備考 W3C/SYMM-WGが検討を進めていたSMILプロファイル"Web Enhanced Media Language Profile"が, このサービスを提供できるものと考えらていた。このプロファイルは, SMIL 2.0の初期のWD(作業原案)には含まれていたが, その後のテキストからは除外されたため, SMIL 'a'(IP-cast SMIL Integration)プロファイルを開発し, この解説に添付する。

b) サービス概要

このプラットフォームによって提供されるサービスは, 次の特徴をもつ。

c) 設計要件

前述のサービスを実現するマーク付け言語は, 次の要件を満たさなければならない。

d) 設計方針

e) SMIL 'a'プロファイルの抽象プロファイル

ここでは, SMILの機能を規定する抽象モジュールのリストという意味で, "抽象プロファイル"を定義する。

SMIL 'a'プロファイルは, XHTMLをホスト言語とするSMILのプロファイルとする。そのため, SMIL 2.0の必須モジュールのほか, HTMLの必須モジュールが必要となる。必要となる最少限のモジュールを示す。

前述のサービスの実現のために追加するSMIL 2.0のモジュールを次に示す。


4. 参考文献

[1] Synchronized Multimedia Integration Language (SMIL 2.0), W3C Recommendation, 2001-08

[2] SMIL Animation, W3C Recommendation, 2001-09

[3] Scalable Vector Graphics (SVG) 1.0 Specification, W3C Recommendation, 2001-09

[4] TR X 0014:1999, 同期化マルチメディア統合言語(SMIL) 1.0, 1999-05


5. 原案作成委員会

この標準情報(TR)の原案を作成した(財)日本規格協会 情報技術標準化研究センター(INSTAC)の次世代コンテンツの標準化に関する調査研究委員会及び作業グループ(WG3)の委員構成を,それぞれ解説表5.1及び解説表5.2に示す。

解説表5.1 次世代コンテンツの標準化に関する調査研究委員会
氏名 所属
(委員長) 池田 克夫 大阪工業大学
(幹事) 村田 真 日本アイ・ビー・エム株式会社
(幹事) 小町 祐史 パナソニックコミュニケーションズ株式会社
(幹事) 平山 亮 金沢工業大学
内山 光一 株式会社東芝
久保田 靖夫 大日本印刷株式会社
黒川 利明 株式会社CSK
斎藤 伸雄 凸版印刷株式会社
二本松 勝 株式会社日立製作所
木戸 達雄 経済産業省産業技術環境局
藤原 洋 株式会社インターネット総合研究所
松本 充司 早稲田大学
柳町 昭夫 株式会社NHKアイテック
(事務局) 山中 正幸 財団法人日本規格協会

解説表5.2 作業グループ3(WG3)
氏名 所属
(主査) 小町 祐史 パナソニックコミュニケーションズ株式会社
(幹事) 内山 光一 株式会社東芝
稲垣 達夫 グランスフィア株式会社
今城 哲二 株式会社日立製作所
荻澤 隆 ウェブプラネットリミテッド
奥井 康弘 株式会社日本ユニテック
風間 一洋 日本電信電話株式会社
上村 圭介 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター
栗林 博 オムロン株式会社
黒川 利明 株式会社CSK
八谷 祥一 株式会社アプリックス
澤田 位 財団法人日本規格協会
出葉 義治 ソニー株式会社
内藤 広志 大阪工業大学
西村 利浩 富士通株式会社
オブザーバ 石川 則夫 経済産業省商務情報政策局
浅利 千鶴 浅利会計事務所
篠原 章夫 日本電信電話株式会社
山東 滋 株式会社日立製作所
萩原 崇弘 経済産業省商務情報政策局
高橋 昌行 経済産業省産業技術環境局
(事務局) 山中 正幸 財団法人日本規格協会