標準情報(TR)    TR X 0005:2003

分散オブジェクト指向のプログラム言語
及びその環境(追補3) 解説



1. 公表の趣旨及び経緯

Enterprise JavaBeans(EJB)は,Javaにおけるエンタプライズシステムを構築する技術の中核をなす。このEJBコンポネント技術は,Java Servlets API,JavaServer Pages及びXML技術とともに, J2EE(Java 2 Platform, Enterprise Editon)として体系化されている。 アプリケーション開発者が,J2SE(Java 2 Platform, Standard Editon) Optional PackageであるJNDI(Java Naming and Directory Interfaces), J2SEコンポネントであるRMI(Remote Method Invocation)などの他の機能と共に使用し,ビジネスロジックをカプセル化して, システムレベルの問題に煩わされないことを目指している。 これらは,トランザクション,並行性,セキュリティ,分散などについて一貫した体系の下でのシステム構築を可能とする。 EJB規定は, 技術的な内容だけでなく, その開発・導入から運用までの技術者などの役割を規定したEJB役割, 導入シナリオまでを含んでいて,コンポネント技術全般に関して示唆に富む。

EJB技術は,Enterprise JavaBeans, Version 1.0(EJB1.0)[1]からEJB1.1[2]を経て, このEJB2.0[3]となってきたが,既にEJB2.1[4]の提案がなされ,検討が進んでいる。 EJB2.1の提案においては,ウェブサービス支援機能が追加され,ステートレスセションビーンがウェブサービス端点を実装する。これによって,外部ウェブサービスをあらゆるエンタプライズビーンが活用できる。 コンテナ管理タイマサービスが追加され,より高水準のビジネスプロセスのモデル化及び管理がエンタプライズビーンで可能となる。EJB QLについては,集約関数,結果の順序付け,スカラ関数の追加などの機能強化を行う。

EJB1.0の規定内容については,(財)日本規格協会 情報技術標準化研究センター(INSTAC)の高速Webにおける標準化に関する調査研究委員会の1998年度の活動として,翻訳作業が行われ,1998年11月に,TR X 0005:1998に対して第6章を追加する追補1として,工業技術院(当時)に原案提出された。この追補1は,1999年3月に公表されている。この追補1については,図が不鮮明であるとの読者からのコメントがあり,図を書き改めた第2刷が,2001年5月に発行された。

INSTACの次世代コンテンツの標準化に関する調査研究委員会(NGC)は, Java関連技術の標準化動向に着目して調査研究を行ってきた。Sun Microsystemsが EJB2.0の原案を公表すると, 同委員会は直ちにその内容レビューを行い, それがJava関連技術に極めて重要な技術であるため, 標準情報(TR)として国内に示す必要があることを提言した。

さらに同委員会は, 2002年度の活動としてこのEJB2.0の概要作成を計画し, 作業グループWG3がこの作業を担当した。WG3は, その概要をTR X 0005 追補3として位置付け, 2003年1月にその原案を完成して, 経済産業省産業技術環境局に提出した。


2. 審議中の主要検討課題

2.1 訳語に関する検討

類似用語については次のとおり訳語の使い分けを行い,概要記述の中での概念の識別を明確にした。

beanビーン
BeanBean

enterprise組織
Enterpriseエンタプライズ

2.2 主な訳語

訳語は, 原則としてTR X 0005 追補1に用いられたものを採用した。訳語の選定に際しては, “EJBコンポーネントに関するコンソーシアム”の日本語用語部会[5]とリエゾンをとり, 慎重な検討を重ねた。新たに採用した主要な訳語を解説表2.1にそれを示して,今後の改正,関連規定の作成等に際しての参考とする。

解説表2.1 訳語一覧
原語訳語
abstract persistent scheme抽象永続性スキーマ
accessアクセス(する)
application assembly instructionsアプリケーション組立て命令
archtecture体系
aspect側面
assemble組み立てる
assembler組立て者
assembly組立て
atomic原子的単位として
attach取り付ける
beanビーン
BeanBean
beansビーンズ
BeansBeans
business application業務アプリケーション
business logicビジネスロジック
client view利用側ビュー
client-view利用者側から見える
combine結合する
compatible互換性
compileコンパイル
complient準拠
componentコンポネント
connection poolingコネクションプール処理
connection接続
consumer消費者
contract契約
customize合わせ込む
deployer配備者
deployment配備
descripter記述子
developer's view開発者のビュー
dirty detectionごみ検知機構
distribution分散
EJB ContainerEJBコンテナ
EJB roleEJB役割
enterprise組織
Enterpriseエンタプライズ
Enterprise beans' structuralエンタプライズビーン構造の
entity実体
entity bean(s)実体ビーン(ズ)
(special) entry特別の参照
external dependency外部依存性
factoryファクトリ
fieldフィールド
finder method検索メソッド
formatフォーマット
goal目標
home interfaceホームインタフェース
identity識別性
indivisual個々の
install取り付ける
instanceインスタンス
integration統合
interoperability相互運用性
lazy loading遅延ローディング
licenseライセンス(する)
life cycleライフサイクル
local client virew局所利用側ビュー
low level低水準
map対応付ける
message serviceメッセージサービス
method intercepterメソッド横取り
multithreadingマルチスレッド処理
nativeJava環境を通さない
overview概要
packagingパッケージ化
persistent永続性
persistent store永続性記憶内容
platformプラットフォーム
pluggability抜き挿し可能性
portable可搬な
primary key主キー
producer作成者
programming languageプログラム言語
provider提供者
query問合せ
recompile再コンパイル
relationshipデータベース関連性
release
requirement要件
resource資源
responsibility責任
run-as identityみなし実行識別性
runtime実行時
scalable規模拡大縮小可能な
secure安全な
security principalセキュリティ責任者
session bean(s)セションビーン(ズ)
specify規定する
statefulステートフル
statelessステートレス
storage記憶装置
structural information構造情報
support支援する, 支持する, etc.
suspend一時停止
transactionalトランザクション処理可能
underlying基本的な
user利用者
vender製造元
versioning版管理
wrap包み込む
message-driven beanメッセージ駆動ビーン


3. 概要としての記述

3.1 章・節などの構成

原規定の概要として構成するために, 次の記述内容の削除・短縮等を行っている。

3.2 その他の概要表記上の留意点

原規定においては,備考などを斜体のフォントを用いて表示している箇所がある。これらに対しては,必要に応じて, "備考"と明記している。


4. 懸案事項

4.1 見出しの修正

4.の見出しは,原規定では"Overview"となっているが,1.3(原規定では1.4)の記述に基づき, この追補では"適用範囲"としている。


5. 参考文献

[1] Enterprise JavaBeans Specification, Version 1.0, Sun Microsystems, 1998-03

[2] Enterprise JavaBeans Specification, Version 1.1, Sun Microsystems, 1999-12

[3] Enterprise JavaBeans Specification, Version 2.0, Sun Microsystems, 2001-04

[4] Enterprise JavaBeans Specification, Version 2.1 (Proposed Final Draft), Sun Microsystems, 2002-08

[5] EJB2.0日本語用語規約 V1.0, EJBコンポーネントに関するコンソーシアム日本語用語部会, 2002-12


6. 原案作成委員会

この標準情報(TR)の原案を作成した(財)日本規格協会 情報技術標準化研究センター(INSTAC)の次世代コンテンツの標準化に関する調査研究委員会及び作業グループ(WG3)の委員構成を,それぞれ解説表6.1及び解説表6.2に示す。

解説表6.1 次世代コンテンツの標準化に関する調査研究委員会
氏名 所属
(委員長) 池田 克夫 大阪工業大学
(幹事) 村田 真 日本アイ・ビー・エム株式会社
(幹事) 小町 祐史 パナソニックコミュニケーションズ株式会社
(幹事) 平山 亮 金沢工業大学
内山 光一 株式会社東芝
久保田 靖夫 大日本印刷株式会社
黒川 利明 株式会社CSK
斎藤 伸雄 凸版印刷株式会社
二本松 勝 株式会社日立製作所
木戸 達雄 経済産業省産業技術環境局
藤原 洋 株式会社インターネット総合研究所
松本 充司 早稲田大学
柳町 昭夫 株式会社NHKアイテック
(事務局) 山中 正幸 財団法人日本規格協会

解説表6.2 作業グループ3(WG3)
氏名 所属
(主査) 小町 祐史 パナソニックコミュニケーションズ株式会社
(幹事) 内山 光一 株式会社東芝
稲垣 達夫 グランスフィア株式会社
今城 哲二 株式会社日立製作所
荻澤 隆 ウェブプラネットリミテッド
奥井 康弘 株式会社日本ユニテック
風間 一洋 日本電信電話株式会社
上村 圭介 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター
栗林 博 オムロン株式会社
黒川 利明 株式会社CSK
八谷 祥一 株式会社アプリックス
澤田 位 財団法人日本規格協会
出葉 義治 ソニー株式会社
内藤 広志 大阪工業大学
西村 利浩 富士通株式会社
オブザーバ 石川 則夫 経済産業省商務情報政策局
浅利 千鶴 浅利会計事務所
篠原 章夫 日本電信電話株式会社
山東 滋 株式会社日立製作所
萩原 崇弘 経済産業省商務情報政策局
高橋 昌行 経済産業省産業技術環境局
(事務局) 山中 正幸 財団法人日本規格協会