標準情報(TR) TR X 0068:2002

CDメディア物理的識別のための指針

Guideline for Physical Identification of CD Media



序文

この標準情報(TR)は,2000年度及び2001年度における光産業技術振興協会 光ディスク標準化委員会 フォーマット分科会の調査研究をもとに工業標準化の促進に関連して特に重要と判断される技術情報をまとめ,標準情報(TR)(タイプU)として公表するものである。


1. 適用範囲

この標準情報(TR)は, コンパクトディスク(CD)メディアを主として視覚的に識別し, そこに記録されている情報, その情報の各種属性などを, 利用者に対して簡潔に表示するための物理的手法についての指針を示す。

この指針に従うことによって, CDメディアの利用者は, メディア又は/及びメディアに記録された情報に障害を与える可能性をなるべく小さくしたまま, CDメディアの物理的識別を容易に行うことができる。


2. 引用規定

次の規格及び標準情報(TR)に含まれる規定内容は,この標準情報(TR)の文中での引用によって,この標準情報(TR)の規定の一部となる。表示された版は,この標準情報(TR)の出版の際に有効であったものとする。

JIS S 8605-1993, コンパクトディスクディジタルオーディオシステム
 備考1 IEC 908:1987, Compact disc digital audio systems が, この規格に一致している。IEC 908:1987は, 既に改訂されて, IEC 60908:1999として発行されている。
 備考2 Red Book: Compact Disc Digital Audio System Description は, IEC 60908:1999に一致している。この標準情報(TR)では, JIS S 8605に含まれないRed Bookの規定内容については, このRed Bookを参照する。

JIS X 6281-1992, 120mm再生専用形光ディスク(CD-ROM)
 備考1 ISO/IEC 10149:1995, Data interchange on read-only 120mm optical data disc (CD-ROM) の前の版(1989年)が, この規格に一致している。
 備考2 Yellow Book: Compact Disc Read Only Memory System Description が, この規格に対応している。

TR X 0025:2000, 追記形コンパクトディスク(CD-R)システム
 備考 Orange Book: Recordable Compact Disc System, Part 2 CD-WO version 2.0 が, この規定に一致している。

TR X 0066:2002, 書換形コンパクトディスク(CD-RW)システム
 備考 Orange Book: Recordable Compact Disc System, Part 3 CD-RW version 2.0 が, この規定に一致している。


3. 定義

この標準情報(TR)で用いる主な用語の定義は, 次による。

3.1 ディスクの不均衡 (disk unbalance) メディアの幾何学的中心からの重心の偏心量をr(mm), メディアの質量をmd(g)とするとき, ディスク不均衡Ud(g.mm)は
Ud= md*r (1)
となり, メディアの回転数をfrot(Hz)とするとき, ディスク不均衡の力Fu(N)は, 次式で与えられる(TR X 0066を参照)。
Fu= Ud*(2π*frot)2*10-6 (2)
参考 メディアの回転数は, ドライブに依存し, ドライブよってはその値がかなり大きくなることがあることに注意する必要がある。

3.2 保持部 (clamping area) メディアの幾何学的中心からの距離が26〜33mmであるメディア部分(JIS S 8605を参照)。

3.3 スティカ (sticker) メディアに貼り付けてメディアの物理的識別を容易するラベル。


4. メディアの関連する物理規定

CDメディア(CD, CD-ROM, CD-R及びCD-RW)の規格又は標準情報(TR)は, 関連する物理規定を次のとおり定めている。

4.1 CD及びCD-ROM

JIS S 8605及びJIS X 6281が, 表4.1の内容を規定する。CD及びCD-ROMのディスク不均衡の力については, 表4.2の値を適用する。

表4.1 CD及びCD-ROMに関する関連規定
規定項目 許容範囲 備考
外径 12 cm: 120±0.3 mm
 8 cm:  80±0.2 mm
温度23±2 ℃及び
相対湿度(50±5) %で測定。
厚さ 1.2+0.3 mm
   -0.1 mm
質量 12 cm: 14〜33 g
 8 cm:  6〜16 g


4.2 CD-R

TR X 0025が, 表4.2の内容を規定する。CD-Rの外径, 厚さ, 質量については, 表4.1の値を適用する。

表4.2 CD-Rに関する関連規定
規定項目 許容範囲 備考
ディスク不均衡の力 < 0.04 N 10 rpsで測定。


4.3 CD-RW

TR X 0066が, 表4.3の内容を規定する。CD-RWの外径, 厚さ, 質量については, 表4.1の値を適用する。

表4.3 CD-RWに関する関連規定
規定項目 許容範囲 備考
ディスク(12 cm)の不均衡 < 2.5 g.mm frot=10 Hzにおける
Fu< 0.01 N に相当。
ディスク(8 cm)の不均衡 < 1 g.mm frot=10 Hzにおける
Fu< 0.004 N に相当。


5. メディアへの筆記用具による直接記入

5.1 記入

筆記用具を用いてメディア上に識別情報を直接記入する場合, 次の点に注意しなければならない。

参考1 ボールペンを用いてメディア上に識別情報を直接記入することは, 記録面の変形を生じさせ易い。

参考2 フェルトペンには, 芯の強度を保つために中に硬い鉄心など入れた芯をもつ製品があることに注意する必要がある。

備考 メディア上に識別情報を直接記入する場合の筆圧は, トラックジャンプを起こさない値に制限される。これは, 直径100μm以内の空気泡であれば1個まで, 直径200μm以内の黒点であれば1個まで, 複屈折を含まない直径300μm以内の黒点であれば3個までに相当する。

5.2 消去

筆記用具を用いてメディア上に直接記入された識別情報を消去する場合, メディアの素材に変形を与えず, メディアの素材に対する侵蝕性のない消去方法を用いることに注意しなければならない。

参考1 砂消しゴムによる消去は, メディアの素材に変形を与え易い。

参考2 メタノールで消せるフェルトペンの使用が推奨される。


6. メディアへのスティカの貼付け

メディアの識別情報を記入したスティカをメディアに貼る場合, 次の点に注意しなければならない。

参考1 スティカの重心をメディアの幾何学的中心にできるだけ一致させて, スティカを貼り付ける必要がある。

参考2 ディスクアンバランス力を小さくするには, 可能な限り軽い素材(例えば, ポリエステルフィルム)で作った, 同心円状のスティカの使用が望ましい。

参考3 同心円状でないスティカについては, できるだけメディアの幾何学的中心に近い位置に, 軽くて小さいスティカを張ることが望ましい。

参考4 スティカへの識別情報の記入は, スティカをメディアに貼り付ける前に行う。止むを得ず, メディアに貼り付けたスティカに識別情報の記入を行う場合には, 5.の勧告に従う。

参考5 貼り付けられたスティカを剥がすことは推奨しない。スティカの接着剤の接着力の強さによって, スティカを剥がす際にメディアの保護層を損傷することがある。

参考6 貼り付けられたスティカ及びその接着剤の寿命は, 多くの場合メディアの寿命より短いことに留意する必要がある。

参考7 スティカを貼り付けられたメディアへのデータ記録は, なるべく低速で行うことが望ましい。

参考8 Orange Bookのライセンサは, スティカの貼付けを推奨していない。


7. メディアへの印刷

7.1 印刷

メディア上に識別情報を直接印刷する場合, 次の点に注意しなければならない。

参考 識別情報を印刷されたメディアへのデータ記録は, なるべく低速で行うことが望ましい。

7.2 消去

メディア上に直接印刷された識別情報を消去する場合, メディアの素材に変形を与えず, メディアの素材に対する侵蝕性のない消去方法を用いることに注意しなければならない。

参考 砂消しゴムによる消去は, メディアの素材に変形を与え易い。