日本工業規格

JIS X 6281:2004    
(ISO/IEC 10149:1995)    

120 mm再生専用形光ディスク(CD-ROM)

Data interchange on read-only 120 mm optical data disks (CD-ROM)



序文

この規格は, 1995年に第2版として発行されたISO/IEC 10149 [Information technology — Data interchange on read-only 120 mm optical data disks (CD-ROM)]を翻訳し, 技術的内容及び規格票の様式を変更することなく作成した日本工業規格である。


1. 適用範囲

この規格は,情報処理システム間の情報交換用及び情報記憶用の,CD-ROMという120 mm光ディスクの特性を規定する。

この規格が規定する光ディスクは,利用者への配布前に情報が記録され,ディスクからの再生だけが可能な種別とする。この規格は,次の規定を行う。

これらの特性は,ディジタルデータを記録するトラックについて規定する。この規格に従って,ディスクは,ディジタル音声データを記録する一つ以上のトラックを含んでもよい。それらのトラックは,JIS S 8605に従って記録しなければならない。

  備考 この規格の対応国際規格を,次に示す。
  なお,対応の程度を表す記号は,ISO/IEC Guide21に基づき,IDT(一致している),MOD(修正している),NEQ(同等でない)とする。
ISO/IEC 10149:1995,Information technology — Data interchange on read-only 120 mm optical data disks (CD-ROM) (IDT)


2. 適合性

光ディスクがすべてのこの規格の必す(須)要件に従うとき, その光ディスクは, この規格に適合している。


3. 引用規格

次の規格に含まれる規定内容は, この規格の文中での引用によって, この規格の規定の一部となる。表示された版は, この規格の出版の際に有効であったものである。規格は, すべて改訂の対象であり, この規格に基づく合意の関係者は, 次に示す規格の最新版の適用可能性を調べるのがよい。現在有効な国際規格の登録維持は, ISO及びIECの構成員が行っている。

JIS X 0606:1998 情報交換用CD-ROMのボリューム構造及びファイル構造

  備考 ISO 9660:1988 Volume and file structure of CD-ROM for Information Interchange が, この規格の前の版(1990年版)に対応している。

JIS S 8605-1993 コンパクトディスクディジタルオーディオシステム

  備考 IEC 908:1987 Compact disc digital audio systems が, この規格に一致している。IEC 908:1987は, 既に改訂されて, IEC 60908:1999として発行されている。


4. 定義

この規格で用いる主な用語の定義は, 次による。

4.1 オーディオトラック (audio track) ディジタル符号化した音声情報を含む情報トラック。

4.2 同心度 (concentricity) 二つの円形のものの中心が存在しなければならない円形公差区域の直径。

4.3 制御バイト (control byte) F2フレームに加える, 番地情報を含む98バイトの表の中の8ビットバイト。

4.4 ディジタルデータトラック (digital data track) セクタの中に構成され, ディジタル利用者データを含む情報トラック。

4.5 F1フレーム (F1 frame) スクランブラの出力であって, CIRC符号化器の入力となる24個の8ビットバイトのグループ。

4.6 F2フレーム (F2 frame) CIRC符号化器の出力となる32個の8ビットバイトのグループ。

4.7 F3フレーム (F3 frame) 制御バイトをもつF2フレームであって, EFM符号化器の入力となる33個の8ビットバイトのグループ。

4.8 情報領域 (information track) リードイン領域, 利用者データ領域及びリードアウト領域からなる, 物理トラックをもつディスクの領域。

4.9 情報トラック (information track) 利用者情報の集まりを含むディスクの領域。

4.10 物理トラック (physical track) 光学ヘッドが追従する, ディスク上の連続したら(螺)旋状の線の360度分の経路。

4.11 半径方向加速度 (radial acceleration) 指定の回転速度でのディスクの回転軸に向う物理トラックの半径方向の加速度。

4.12 半径方向振れ (radial runout) 1回転にわたって測定される, 物理トラックの回転軸への最大変位と最小変位との差。

4.13 セクション (section) 制御バイトの一つの完全な表を含む98個のF3フレームのグループ。

4.14 セクタ (sector) 情報領域におけるディジタルデータトラックの番地付け可能な最小部分であって, その領域の他の番地付け可能部分とは独立にアクセスできる。

4.15 利用者データ領域 (user data area) 利用者データを含む情報領域の部分。


5. 環境

5.1 試験環境

5.1.1 光学ヘッド

試験測定に用いる光学ヘッドは, 次の特性をもたなければならない。

項目 特性
波長λ780±10 nm
偏光円偏光
開口数0.45±0.01
対物レンズの瞳の縁での強度最大強度値の50%以上

情報層近くのビームの波面収差の実効値(rms)は, 0.07λより小さくなければならない。波面収差へのディスクの寄与は, 0.05λより小さくなければならない。

5.1.2 クランプ

ディスクは, 適用可能であれば, 最小29 mmの内径をもち最大31 mmの外形をもつ二つの同心円の間で, 1〜2 Nの範囲の力で保持しなければならない。

5.1.3 標準試験環境

特記しない限り, この規格の要件を検査するためにディスクに対して行われる試験及び測定は, 次の条件下でなければならない。

項目条件備考
温度25±10 ℃結露がないこと。
相対湿度45〜75 %
気圧96±10 kPa
試験前放置時間最小24時間

5.1.4 特定試験環境

特記される場合, 試験及び測定は, 次の条件下で行われなければならない。

項目条件備考
温度23±2 ℃結露がないこと。
相対湿度45〜55 %
気圧96±10 kPa
試験前放置時間最小24時間

5.2 動作環境

データ交換用に用いるディスクは, ドライブに装着し電圧を供給してディスクの外側の表面で測定した, 次の条件下で動作しなければならない。

保存条件下にあったディスクは, 動作前には少なくとも2時間, 動作環境になじませなければならない。

項目条件備考
温度-25〜+70 ℃結露がないこと。
相対湿度10〜95 %
絶対湿度0.5〜60.0 g・m-3
最大許容衝撃温度50 ℃
最大許容衝撃相対湿度30 %

5.3 保存環境

保存環境は, ディスクが保存される際の周囲条件であり, 次のとおリとする。附属書Fを参照されたい。

項目条件備考
温度-20〜+50 ℃結露がないこと。
相対湿度5〜90 %
最大湿球温度29 ℃
気圧75〜105 kPa


6. 不燃焼性

ディスクは, マッチの炎から着火するとき, 静止した二酸化炭素雰囲気中で燃焼し続けない材質で構成されなければならない。


7. 材質

この規格は, 情報領域(8.6を参照)だけにおけるディスクの材質を規定する。ディスクの残りの部分は, この規格の必す(須)の要件が満たされれる限り, どんな材質でも構成できる。

ディスクの重さは, 14〜33gの範囲内でなければならない。


8. 機械的特性,物理的特性及び寸法特性

寸法特性は, ディスクの交換及び互換性のある使用にとって必す(須)と考えられるこれらのパラメタに関して指定される。設計の自由があるところでは, 示される要素の機能特性だけが規定される。図は, 要約した形式で寸法特性を示す。さまざまなディスク部分は, 中心孔から外縁まで示される。

すべての直径は, 中心孔の中心を基準とする。

他の寸法は, 二つの基準面P及びQを基準とする。

図1は, ディスク部分の断面を示す。図2は, 中心孔の端を拡大して示す。図3は, 惰報領域のディスクの断面を拡大して示す。図4は, 周縁部の断面を拡大して示す。

図1 ディスクの断面概要


図2 中心孔の詳細断面


図3 惰報領域の拡大断面


図4 ディスク周縁部の詳細断面

8.1 基準面

基準面Pは主基準面であって, クランプ領域(8.4参照)の底面の位置にある面とする。

基準面Qは, クランプ領域の上面の位置にある, 基準面Pと平行な面とする。

8.2 中心孔

中心孔は, 円柱形状をもたなければならない(図1及び図2を参照)。その直径は, 次のとおりとする。

d1 = 15.0+0.1-0.0 mm

直径d1は, 特定試験環境で測定しなければならない。

中心孔の底縁は, 第1領域(8.3を参照)の底面の上に,

h1 = 0.1 mm(最大)
の高さまで, 次の角度で面取りを施してよい。
α = 45°

その代わりに, この縁を0.1 mmより大きくない半径で丸くしてもよい。

中心孔の上縁には, バリがあってもよく, それは, 第1領域の上面の上に

h2 = 0.2 mm(最大)
まで伸ることが許容される。

8.3 第1領域

第1領域は, 図1に示すとおり, 直径d1から直径d2に及ぶ範囲とする。ここでd2は, 次とおりとする。

d2 = 20+60 mm

第1領域全体において, ディスクの上面は, 基準面Qから次に示すh3まで低くてよく,

h3 = 0.2 mm(最大)

ディスクの底面は, 基準面Pから次に示すh4まで高くてよい。

h4 = 0.2 mm(最大)

さらに,

20 mm < d2 < 26 mm
で定義される第1領域の部分においては, ディスクの上面は, 基準面Qから次に示すh5まで低くてよく,
h5 = 0.4 mm(最大)

ディスクの底面は, 基準面Pから次に示すh6まで高くてよい。

h6 = 0.4 mm(最大)

8.4 クランプ領域

クランプ領域は, 図1に示すとおり, 直径d2の最大値から直径d3に及ぶ範囲とする。ここでd2の最大値及びd3は, 次とおりとする。

d2 (最大) = 26 mm
d3 = 33 mm(最小)

クランプ領域の底面は, 平面度が0.1 mm以内であって, 基準面Pになければならい。

クランプ領域の上面は, 基準面Pとの平行度が0.2 mm以内でなければならず, それが基準面Qを定義する。

基準面Pからの上面の高さh7は, 次のとおりでなければならない。

h7 = 1.2+0.3-0.1 mm

8.5 第2領域

第2領域は, 図1に示すとおり, 直径d3から直径d4に及ぶ範囲とする。ここでd4は, 次のとおりとする。

d4 = 44 mm(最大)

この領域において, ディスク底面は, 基準面Pからh8まで高くてよく, 基準面Pからh9まで低くてよい。ここでh8及びh9は, 次のとおりとする。

h8 = 0.4 mm(最大)
h9 = 0.4 mm(最大)

この領域において, ディスク上面は, 基準面Qからh10まで高くてよく, 基準面Qからh11まで低くてよい。ここでh10及びh11は, 次のとおりとする。

h10 = 0.4 mm(最大)
h11 = 0.4 mm(最大)

8.6 情報領域

情報領域は, 図1及び図3に示すとおり, 直径d4から直径d5に及ぶ範囲とする。ここでd5は, 次のとおりとする。

d5 = 118 mm(最大)

情報領域は, 次の区域で構成される。

a) 内周バッファ区域  直径d4から直径d6に及ぶ範囲。ここで,

d4 + 1 mm ≦ d6 ≦ 46 mm(最大)
この直径は, 特定試験環境で測定されなければならない。

b) リードイン区域  直径d6から直径d7に及ぶ範囲。ここで,

d7 = 50.0+0.0-0.4 mm
この直径は, 特定試験環境で測定されなければならない。

c) 利用者データ区域  直径d7から直径d8に及ぶ範囲。ここで,

d8 = 116 mm(最大)
この直径は, 特定試験環境で測定されなければならない。

d) リードアウト区域  直径d8から直径d9に及ぶ範囲。ここで,

d9 = (d8 + 1 mm)(最小)

e) 外周バッファ区域  直径d9から直径d5に及ぶ範囲。ここで,

d9 + 1 mm ≦ d5 ≦ 118 mm

直径d4から直径d5の間, ディスクは, 次のものから構成される(図3参照)。

ラベルは, 直径d4d5の区域を超えてよい。

基準面Pからラベルまでの高さh12は, 次のとおりでなければならない。

h12 = 1.2+0.3-0.1 mm

透明基板の厚さeは, 次のとおりでなければならない。

e = 1.2±0.1 mm

透明基板の底面は, 基準面P上になければならない。

透明基板の屈折率は, 1.55±0.1でなければならない。

透明基板の複屈折は, リターデーション(平行光, 円偏光, 垂直入射, ダブルパス)で表し, 最大100 nmでなければならない。

透明基板及び反射層の反射率は, 垂直入射の平行光によって, 情報領域の未記録部分で測定するとき, 最小70 %でなければならない。

100 Hz以下の周波数でのこの反射率の相対変化は, ディスクが走査速度で回転しているとき, 3 %より小さくなければならない。

これらのパラメタは, 5.1.1に規定する波長で測定されなければならない。

8.7 周縁領域

周縁領域は, 図1及び図4に示すとおり, 直径d5からd10に及ぶ範囲とする。ここでd10は, 次のとおりとする。

d10 = 120.0±0.3 mm

この直径d10は, 特定試験環境で測定しなければならない。

中心孔に内接する最大円に対する同心度は, 0.2 mm以内でなければならない。

直径d5から直径d11に及ぶ区域では, d11は, 次の条件をどちらも満足しなければならない。

d11d5
117.7 mm ≦ d11 ≦ 118.3 mm
ディスクの底面は, 基準面P上になければならず, 基準面Pからのディスク上面の高さは, h12に等しくなければならない。

直径d11からd10に及ぶ区域では, ディスクの底面は, 基準面Pからh13まで低くてよく, ディスクの上面は, h12よりh14まで高くてよい。ここで,

h13 = 0.1 mm(最大)
h14 = 0.1 mm(最大)

h13及びh14は, 次の条件を満足しなければならない。

h12 + h13 + h14 ≦ 1.5 mm

この区域では, ディスクの厚さは, 図4に示すとおり, 次を満たすまで減少してもよい。

h16 - h15 = 0.6 mm(最小)

8.8 一般的注意

8.28.7において規定され, hiで示されるすべての高さは, 互いに独立している。これは, 例えば, 第1領域の上面が基準面Qからh3まで低くても, この領域の底面は, 基準面Pからh4まで高くなくてもよいことを意味する。 さらに, クランプ領域と情報領域との許容範囲を含む上面の高さ(つまり, h7及びh12)が同じ数値をもっても, 実際の値は同一でなくてもよい。


9. 入射面の機械的偏位

次の要件は, 静止状態のディスクと, 5.1.2に従ってクランプされ, 走査速度で回転しているディスクとの両方に適用する。

情報領域の底面(つまり, 再生光の入射面)は, 直径d6d11の間で, 基準面Pから±0.4 mmよりも大きく逸脱してはならない。1回転にわたる実効値は, 0.3 mmを超えてはならない。

この入射面の法線が基準面Pの法線となす角度は, 直径2 mmの領域での平均で, 0°36′を超えてはならない。光ビームが基準面Pの法線に沿ってディスクヘ入射するとき, 基準面Pの法線から半径方向への反射ビームの角度の偏りは, ±1°36′を超えてはならない。この数値は, 情報層と入射面の平行度の許容範囲を含む。


10. 反射層の偏位

5.1.2に従ってクランプされ, 走査速度で回転しているディスクでは, 反射層の偏位は, 光学ヘッドから見ると, 基準面P(8.6参照)に関するその公称位置からの軸の偏差となる。したがってそれは, 厚さ, 屈折率及び入射面の偏位の許容範囲からなる。この偏位は, 直径d4及びd5の間で測定されなければならない。


11. 物理トラック幾何

11.1 物理トラックの形状

直径d6及びd9の間に物理トラックがなければならず, それぞれのトラックは, 連続したら(螺)旋状の線の360度を形成する。

各物理トラックは, 光学ヘッドによって検出できるくぼみの連続で構成されなければならない。くぼみを,ピットと呼び, そうでないところを平坦反射層とする。符号化した情報は, ピット長の変化及びピット間隔の変化によって表現される。ピットの深さは, 12.2の要件を満すものでなければならない。

11.2 回転方向

ディスクが光学ヘッドから見て反時計方向に回転するとき, 物理トラックは, 外側へ向ってら(螺)旋とならなくてはならない。

11.3 トラックピッチ

ら(螺)旋は, 1.6±0.1 μmのピッチをもたなければならない。

11.4 走査速度

記録中の走査速度は, 1.20〜1.40 m/sでなければならず, 4.3218 Mbit/sのチャネルビットレートをもつ(19.参照)。記録時のディスクの速度変動は, ±0.01 m/sでなければならない。

11.5 トラックの半径方向振れ

走査速度で回転しているディスクについて, 次の要件が満たされなければならない。


12. 光再生システム

12.112.6の要件を試験するために, 反射層の情報は, 5.1.1に従った光学ヘッドからの光ビームが透明基板を通してこの層に焦点を結んで再生されなければならない。再生時には, 走査光スポットは, 反射する情報層のピットによって回折される。光学システムの対物レンズに回折して入る光パワーは, 符号化されたディジタル情報に従って変調される。変調された光電流を, 高周波(HF)信号と呼ぶ。

12.1 HF信号

HF信号は, 図6に示すとおりに, AC結合の前で測定する。最高基本周波数及び最低基本周波数を, 720 kHz及び196 kHzとする。最高基本周波数及び最低基本周波数の検出器電流のpeak-to-peak値を, それぞれI3及びI11で示す。最低基本周波数で与えられるHF信号の最大値を, Itopで示す。

HF信号に含まれる情報は, HF信号が判定レベルIDと交差する位置の形で抽出される。この判定レベルIDは, I3の極値の中点のレベルとする。I3及びIDの連続する交差の間には, アイパターンの三つの菱形がある。


図6 HF信号

12.2 変調振幅

I3, I11及びItopの関係は, 次のとおりでなければならない。

0.3 ≦ I3/Itop ≦ 0.7
I11/Itop ≧ 06

12.3 対称性

判定レベルIDに関するHF信号の対称性は, 次のとおりでなければならない。

-20 % ≦ (1/2 - ID/I11)×100 % ≦ +20 %

12.4 クロストーク

クロストークは, ビームを二つのトラックの中間に置いたとき及びビームをトラック上に置いたときのHF信号振幅の比として測定される。この比は, 0.5より小さくなければならない。

12.5 HF信号の品質

12.5.1 チャネルビットの位置ジッタ

チャネルビット(19.参照)の位置ジッタは, チャネルビットレート(11.4参照)の周波数変調を引き起こす。許容最大ジッタは, 単一変調周波数に関する時間誤差として表され, 図7に示される。時間誤差は, 一定の走査速度(11.4参照)で測定されなければならない。


図7 チャネルビットの位置ジッタ対変調周波数

12.5.2 フレーム誤りの規定

8ビットバイトの1ビット以上に誤りがあれば, その8ビットバイトには誤りがあるとしなければならない。

フレーム誤りは, 1バイト遅延セクション(附属書C図C.2参照)の後で, C1復号器の入力において, 1フレーム内に1バイト以上の誤りの発生があったこととする。任意の10秒間で平均したフレーム誤りレートは, 3×10-2より小さくなくてはならない。

12.5.3 バースト誤りの規定

1バイト遅延セクションの後で, C1復号器の入力において, 1フレームに2バイト以上の誤りが連続すると, そのフレームは訂正不能となる。

連続する訂正不能なフレームの数は, 7より小さくなくてはならない。

12.6 半径方向のトラック追従信号

走査スポットのトラックからの半径方向へのずれは, ディスクの半径方向に非対称な回折パターンを生じる。対物レンズの開口の二つの半面(トラックの反対側に位置する。)に回折して入る光パワーI1I2との差分は, 遠視野で測定したとき, 半径方向のトラック追従用のサーボ信号Is=I1-I2を与える。

このサーボ信号Isは, 時定数15 μsの低域フィルタを通る。図8では, トラッキング信号を, スポットの半径方向位置の関数として与えている。走査スポットの半径方向の位置は, スポットがデイスク中心から半径方向に遠ざかっている場合, Isが正の傾きでゼロを横切る際のトラックの中心にある。トラッキング信号のこの符号は, ピットの幾何形状及び検出器の配置によって決まる。


図8 半径方向トラッキング信号対ディスク中心からの半径方向スポット位置

12.6.1 振幅

トラックの中心からビームの焦点が半径方向に0.1 μmオフセットした際に, 円偏光を用いて測定される, 正の傾きでゼロを横切るトラッキング信号の傾きは, 次の式で与えられる。

0.04 ≦ Is/Itop ≦ 0.07

Itopは, 12.1で定義される。

同一ディスクにおいて, トラッキング信号の振幅は, その平均値から±15 %より大きく変化してはならない。

12.6.2 欠陥

欠陥は, その直径が次の値を超えなければ, 許容されなければならない。

さらに, トラックに沿って隣接する欠陥同士の間隔は, 最小20 mmでなければならない。

黒点は, 基板中に入った汚れの粒子であったり, 反射層におけるピンホールであったりする。


13. 記録の一般事項

13.1 惰報トラック

情報領域において情報を含む情報トラックを, 惰報トラックという。各情報トラックは, 物理トラックの一部, 一つの物理トラック全体, 又は複数の物理トラックによって構成されなければならない。

ディジタルデータを含む情報トラックを, ディジタルデータトラックという。これらのトラックは, 14.21.に示す。オーディオ情報を含む情報トラックを, オーディオトラックという。これらのトラックは, JIS S 8605に従わなければならない。CD-ROMは, ディジタルデータトラックだけを含むか, ディジタルデータトラック及びオーディオトラックを含むかのどちらかでなければならない。

13.2 ビット符号化

符号化方式が必要とするとき, 利用者データフィールドは, 各々がビットを含むビット位置の順序付き列と見なされなければならない。


14. ディジタルデータトラックのセクタ

情報トラックに記録されるディジタルデータは, 8ビットのバイトに表現され, セクタにグループ化されなければならない。セクタは, 情報領域の番地付け可能な最小部分であって, 独立にアクセスできる。情報トラック上のセクタ数は可変とする。セクタ数は, 情報トラックに記録される情報の量に依存する。

セクタは, 2352バイトで構成されなくてはならず, 図1012に示すレイアウト構造とする。セクタのレイアウトは, セクタモードのバイトの設定に依存する。図1012の中で, バイト位置は, “0”から番号付けする。位置0は, セクタの最初のバイトに対応する。()の中の数字は, 16進記法で表したバイトの内容を示す。


図10 セクタモード(00)



図11 セクタモード(01)



図12 セクタモード(02)

14.1 同期信号フィールド

同期信号フィールドは, バイト位置0〜11に記録される次の12バイトで構成されなければならない。

14.2 ヘッダフィールド

ヘッダフィールドは, セクタ番地の3バイト及びセクタモードの1バイトで構成されなければならない。

a) セクタ番地の3バイト

リードイン領域にディジタルデータトラックがある場合, この領域にあるヘッダのセクタ番地は, リードイン領域の始点からの相対経過時間によって表されるセクタの物理番地を含まなければならない。

これらの3フィールドは, リードイン領域にあるセクションのQチャネルの部分とする(22.3.3.3及び22.3.4.4を参照)。

利用者データ領域のセクタ番地と, リードアウト領域がディジタルデータトラックを含むときのリードアウト領域のセクタ番地とは, 利用者データ領域の始点からの絶対経過時間によって表される(21.参照)セクタの物理番地を含まなければならない。

これらの3フィールドは, セクタの同期信号がスクランブラに入ると同時にEFM符号化器から出るセクション(18.参照)のQチャネルの部分とする(22.3.3.5を参照)。 ヘッダ中の時間は, ±1秒の精度で与えられなければならない(21.参照)。 この許容範囲は, CIRC(附属書C参照)及びその他の記億レジスタなどによって発生する遅延を考慮している。これらの遅延の大きさは, 30 msのオーダ, つまりディスク上の1セクタの記録長とする。

b) セクタモードの1バイト

バイト位置15にあり, このバイトの設定は, 次のとおりとする。

(00)への設定の場合: 位置16〜2351のすべてのバイトを, (00)に設定することを意味しなければならない。
(01)への設定の場合: 位置16〜2063のすべてのバイトを利用者データバイトとし, 位置2064〜2351のバイトを14.314.6に従って設定することを意味しなければならない。したがって利用者データは, EDC(誤り検出符号), ECC(誤り訂正符号)及びCIRCによって保護される。
(02)への設定の場合: 位置16〜2351のすべてのバイトを, 利用者データバイトとすることを意味しなければならない。利用者データは, CIRCだけによって保護される。

14.3 EDCフィールド

EDCフィールドは, 位置2064〜2067に記録される4バイトによって構成されなければならない。 誤り検出符号は, バイト位置0〜2063に適用される32ビットCRCでなければならない。 データバイトの最下位ビットを最初に用いる。EDCの符号語は, 次の検査多項式によって割リ切れなければならない。

P(x) = (x16 + x15 + x2 + 1)×(x16 + x2 + x + 1)

最下位のパリティビット(x0)は, バイト位置2067の最上位ビットに記録する。

14.4 中間フィールド

中間フィールドは, 位置2068〜2075に記録される8(00)バイトによって構成されなければならない。

14.5 Pパリティフィールド

Pパリティフィールドは, 位置2076〜2247の172バイトによって構成されなければならず, 附属書Aに規定するとおりに, バイト位置12〜2075に計算される。

14.6 Qパリティフィールド

Qパリティフィールドは, 位置2248〜2351の104バイトによって構成されなければならず, 附属書Aに規定するとおりに, バイト位置12〜2247に計算される。


15. スクランブル化

各セクタの位置12〜2351のバイト(バイト12〜2351)は, 附属書Bに従ってスクランブル化されなければならない。スクランブル化したセクタのレイアウト結果は, 図13のとおりでなければならない。


図13 スクランブル後のセクタ


16. F1フレーム

スクランブル化した各セクタは, 一連の連続フレーム上に配置されなければならない。各フレームは, 0〜23に番号付けされた, 24個の8ビットバイトで構成される。セクタの位置0のバイトは, フレームのバイト位置4nに配置されなければならない。ここで, nは, 0, 1, 2, 3, 4又は5とする。そのセクタの連続するバイトは, そのフレームの連続するバイトに配置される。セクタの位置2351のバイトの直後には, 次のセクタの位置0のバイトが続く。

次いで, フレームにおいて偶数-奇数番号付きの各バイト対のバイト順は予約済みとする。つまり, バイト順0, 1, 2, 3, 4, 5…は, 1, 0, 3, 2, 5, 4…に変更される。 24個の交換済み8ビットバイトをもつこれらのフレームを, F1フレームという。F1フレームにおけるセクタのバイト位置0の位置は, 4n + 1とする。ここで, nは, 0, 1, 2, 3, 4又は5とする。

17. CIRC符号化 - F2フレーム

F1フレームは, 附属書Cに従って, CIRC(クロスインタリーブリードソロモン)符号化器に供給されなければならない。 24バイトのF1フレームの各々は, 32バイトのF2フレームの各々に変換される。F1フレームの24個の8ビットバイトの各々のビットパターンは, 変化しないままであるが, バイト自体は移動し, 106個のF2フレーム上に再分配される。 パリティ情報をもつ8個の追加8ビットバイトが加わり, 各F2フレームが, 32バイトで構成される。


18. 制御バイト - F3フレーム及びセクション

制御バイトと呼ぶ単一バイトは, 32バイトの各F2フレームに対して先頭バイトとして付加される。これが, 33バイトの新たなF3フレームを生成する。

制御バイトは, 22.に規定するとおり, 98バイトの表(単数)から得られなければならない。制御バイト(複数)の中の情報は, 主として番地付けのために用いられる。その表(単数)の中のバイト(複数)は, 表(単数)の中のバイト0を先頭としバイト97を末尾として, CIRC符号化器から出る98個の連続したF2フレーム(複数)に付加される。 この操作が, それぞれ33バイトから成る98個のF3フレームの集まり(複数)を生成する。これらをセクション(複数)と呼ぶ。これらのセクション(複数)は, セクタ(複数)とは同期していない。すなわち, あるセクタ(単数)の先頭バイトが置かれるF1フレーム(単数)の番号と, 表の最初の制御バイトが置かれるF3フレーム(単数)の番号との関係が指定されることはない。各セクションは, 制御バイト(複数)をもつそれ自体の表(単数)をもつ。

制御バイト(複数)の生成方法を22.に規定する。


19. ディスクへのF3フレームの記録

F3フレームをディスク上に記録するために, 各8ビットバイトは, 14ビットで表現されなければならない。これを14チャネルビットという。各F3フレームは, いわゆるチャネルフレームによって表され, それは, 同期ヘッダ, 併合ビット及び33個の14チャネルビットで構成される。

19.1 EFM符号化

各セクションのF3フレームのすべての33バイトを, 8ビットバイトとする。これらは, 附属書Dの表に従って14ビットバイトに変換されなければならない。これらの14ビットバイトのビットをチャネルビットと呼ぶ。14チャネルビットからなるこれらのバイトは, 二つの“1”の間に2〜10個の“0”をもつという特徴がある。

各セクションの最初の二つのF3フレームにある最初のバイト, つまりこれらのフレームの制御バイトは, この表に従っては変換されず, 附属書Dの表には含まれない14チャネルビットの特定の同期パターンを与えられる。この二つのパターンは, 次のとおりでなければならない。
  第1フレーム, バイト0, (同期信号0という): 00100000000001
  第2フレーム, バイト0, (同期信号1という): 00000000010010

左端のチャネルビットが, データストリームにおいて最初に送られる。

19.2 同期ヘッダ

同期ヘッダは, 24チャネルビットの次に示す列でなければならない。
    100000000001000000000010
左端のチャネルビットが, データストリームにおいて最初に送られる。

19.3 併合チャネルビット

併合チャネルビットは, 附属書Eに従って設定される3チャネルビットの列でなければならず, 同期ヘッダと14チャネルビットの隣接バイトとの間と同様に, 14チャネルビットのバイトの間に挿入されなければならない。

19.4 チャネルフレーム

各F3フレームは, 次の構成をもつチャネルフレームに変換される。

これらのチャネルビットは, 物理トラックに沿ってディスク上に記録されなければならない。チャネルビット“1”は, 反射層においてピットからランドへの変化又はランドからピットへの変化によって表されなければならない。チャネルビット“0”は, 反射層における無変化によって表されなければならない。


20. 情報領域のトラック構造

情報領域は, 次の領域に情報トラックを含む。

リードイン領域は, リードイントラックという情報トラックだけを含む。リードアウト領域は, リードアウトトラックという一つだけの情報トラックを含む。

利用者データは, 利用者データ領域の情報トラックに記録されなければならない。ディジタルデータを含むすべての情報トラックは, セクタの中に構造化されなければならない。

情報領域の情報トラックを連結するために, これらのトラックは次のものを含んでよい。

20.1 リードイン領域

リードイントラックは, ディジタルデータトラック又はオーディオトラックのどちらかとする。ディジタルデータトラックのとき, それはセクタの中に構造化されなければならず, ポストギャップで終了しなければならない。オーディオトラックのときは, それはJIS S 8605に従わなければならない。

20.2 利用者データ領域

利用者データ領域の情報トラックは, ディジタルデータトラックだけでなければならないか, 又はディジタルデータトラック及びオーディオトラックでなければならないかのどちらかとする。 次の規則が, 利用者データ領域の中のトラックに適用される。

20.3 リードアウト領域

リードアウトトラックは, ディジタルデータトラック又はオーディオトラックのどちらかとする。リードアウトトラックがディジタルデータトラックであるときは, それは, プリギャップなしでセクタの中に構成されなければならない。リードアウトトラックがオーディオトラックであるときは, それは, JIS S 8605に従わなければならない。


21. 情報領域の番地付けシステム

ディスク上の情報トラックのセクションの番地は, 利用者データ領域の開始からそのセクションまでの経過時間として与えられる。この時間は, 各セクションの制御バイトの中に記録され, 絶対時間と呼ばれる。絶対時間は, 1/75秒の分解能をもつ。この時間は, 毎秒4.3218×106チャネルビットのディスクからのデータの転送速度のために与えられる。これは, 厳密に毎秒75セクションになる。

セクタの番地は, 絶対時間としてもセクタヘッダに記録される。記録中のセクタのセクションへのマッピングが, 18.に残る自由のために実装依存であるので, セクタの番地は, セクションの番地への規定された関係はもたない。したがって, セクタの番地は, セクタがCIRC符号化器に入る直前に書き込まれる。

セクタのヘッダにおける絶対時間の公称値は, セクタの同期信号がCIRC符号化器に入る瞬間にEFM符号化器によって処理されるセクションの制御バイトに記録した絶対時間に等しくなければならない。この規定は, CIRC符号化器が記録電子回路における唯一の遅延要素であることを前提としている。

セクタのヘッダの番地における公称時間の許容範囲は, ±1秒でなければならない。この許容範囲は, この規格に実装の自由を残すために,セクションの記録時間(1/75秒)及びセクタの記録時間に比較して大きい。

各セクタは一意の番地をもつ。情報トラックの 利用者データをもつ最初のセクタの番地は, ディスクの目次(TOC, table of contents)の中に記録される(22.3.4参照)。したがってTOCは, 制御バイト中の±1秒の精度をもつ絶対時間によって, ディスク上の情報トラックの開始を指定する。


22. ディジタルデータトラックの制御バイトの規定

前の規定(18.を参照)のとおり, 各セクションの各F3フレームは, その先頭バイトとして, 制御バイトを含む。各セクションについて, 制御バイトは, 次に示す表を構成する。この表(図14参照)の内容は, 1/75秒ごとに, つまりセクションが処理されるのと同じレートで, 更新される。



図14 制御バイト

各バイトは, b1〜b8に番号付けされた8ビットを構成する。ここでビットb8を最上位ビットとする。

セクションの制御バイトの表は, それぞれ96ビットからなるPチャネル, Qチャネル, …, Vチャネル及びWチャネルと呼ばれる8個のチャネルを規定する。バイト0及びバイト1は, 前の規定(19.1を参照)のとおり, 別の扱いとする。

22.1 R〜Wチャネルの設定

これらの6チャネル, つまり 各F3フレームの制御バイトのビットb1〜b6は, 使用されず, 常に“0”に設定される。

22.2 Pチャネルの設定

連続するセクションのすべてのPチャネルは, 情報領域のPチャネルを構成する。

このPチャネルは, フラグを, 各々が情報トラックの始点を示すように設定するために用いられる。 フラグは,“1”に設定されたビットの列によって指定される。 そうでなければ, Pチャネルのビットは,“0”に設定される。一つのセクションのPチャネルのすべてのビットは, 同じ値に設定されなければならない。

フラグ(つまり, Pチャネルにおける“1”の連続した列)の最小長は, 2秒(つまり, 150セクション)でなければならない。Pチャネルにおいて“1”をもつ最後のF3フレーム(つまり, 制御バイトのビットb8が“1”に設定されている最後のF3フレーム)は, 利用者データを含む最初のセクションでなければならない。

情報トラックが, 2秒より長い休止区間で開始するとき, フラグは, この休止区間と同じ長さをもたなければならない。

リードインラックのPチャネルのビットは,“0”に設定されなければならない。

利用者データ領域内の最後の情報トラックのPチャネルは, 2〜3秒(つまり, 150〜225セクション)のフラグで終了しなければならない。その終端は, リードアウトトラックの始点を表さなければならない。リードアウトトラックにおいては, Pチャネルのビットは, 2〜3秒の間“0”に設定される。それから, Pチャネルのビットは, 2.00±0.04 Hzのレート及び50±5 %のデューティサイクルで, 交互に“1”及び“0”となる。

22.3 Qチャネルの設定

連続するセクションのすべてのQチャネルは, 情報領域のQチャネルを構成する。

Qチャネルは, 後で規定するとおり, 詳細な制御情報を含む。 セクションのQチャネルの最上位ビットは, F3フレームNo.2のそれとし, データストリームにおいて最初に送られる。したがって, Qチャネルのビットは, それが記録されるフレームの番号に従って番号付けされる。

セクションのQチャネルのレイアウトは, 図15のとおリでなければならない。



図15 Qチャネルのレイアウト

22.3.1 制御フィールド

Qチャネルの最初のフィールドである 制御フィールドは, 位置2〜5の4ビットで構成されなければならない。それは, 情報トラックに記録された利用者データの型を規定し, この利用者データがコピーされてもいいかどうかを規定する。

(0100)への設定の場合:  利用者データはデジタルデータであって, コピーしてはならない
ことを意味しなければならない。
(0110)への設定の場合: 利用者データはデジタルデータであって, コピーしてもよい
ことを意味しなければならない。

左端のビットは最上位ビットであり, 位置2に記録される。

制御フィールドのビットは, 最短2秒の休止区間(つまり, インデクスフィールドが“0”に設定されたとき。22.3.3.2を参照。)又はリードイン領域だけにおいて変更できる。ただし, 二つのセクションの間で変更できるコピービット, つまり左から3番目のビットを除く。

制御フィールドの他の設定は, オーディオトラックだけに適用される(JIS S 8605参照)。

22.3.2 Qモードフィールド

Qチャネルの2番目フィールドであるQモードフィールドは, 位置6〜9の4ビットで構成されなければならない。それは, Qデータフィールドの内容を規定する(22.3.3, 22.3.4及び22.3.5を参照)。

それは, Qモード1つまり0001, 又はQモード2つまり0010に設定されなければならない。Qモード3は, オーディオトラックだけに適用される(JIS S 8605参照)。 Qモード1の情報は, 10セクションの各連続において少なくても9回繰り返される。Qモード2があると, それは, 100セクションの各連続において少なくても1回繰り返される。

22.3.3 利用者データ領域及びリードアウト領域のQモード1のQデータフィールド

Qデータフィールドは, 時間情報を含む。位置10〜81におけるQデータフィールドの72ビットのレイアウトは, 利用者データ領域及びリードアウト領域において次のとおりでなければならない。最上位ビットは, 位置10に記録される。


図16 利用者データ領域及びリードアウト領域のQデータフィールド

次に示すフィールドのほとんどは, それぞれが4ビットバイトでの2進記法で記録された, 2桁の10進数で表される数値を含む。 フィールドの内容が数値でなく, 特定のビットパターンの場合は, 16進記法で表示される。

Qデータフィールドの各フィールドは, 8ビットから成る。

22.3.3.1 TNOフィールド

TNOフィールドは, セクションが属する情報トラックのトラック番号を規定する。

トラック番号01〜99は, 利用者データ領域の情報トラックの番号でなければならない。連続する情報トラックは, 連続して番号付けされなければならない。ディスクの利用者データ領域の最初の情報トラックは, トラック番号01をもたなければならない。

(AA)に設定されるとき, TNOフィールドはリードアウトトラックを規定する。

22.3.3.2 インデクスフィールド

インデクスフィールドは, 情報トラックの細分を規定するインデクスを含む。

a) インデクス00

インデクスのこの値は, セクションが休止区間として符号化されることを表す。休止区間の全長は, 00に設定されたインデクスをもつ連続したセクションの数に対応する。

b) インデクス01〜99

これらの値は, 利用者データを含む情報トラックの部分の細分のインデクスを規定する。最初の細分は, インデクス01をもたなければならない。連続した細分は, 連続したインデクスの値をもたなければならない。

リードアウトトラックのインデクスフィールドは, 01に設定されなければならない。

22.3.3.3 MIN, SEC及びFRACフィールド

これらの3フィールドは, 相対時間を規定する。つまり, 各情報トラックの中での走行時間の分をMINフィールドで規定し, 秒をSECフィールドで規定し, 1/75秒の倍数をFRACフィールドの00〜74によって規定する。

休止区間(つまり, インデクス = 00)の始点で, 相対時間は, 休止区間の時間に設定される。休止区間においてこの相対時間は減少し, 最後のセクションで0になる。

利用者データ領域の情報トラックの利用者データ部分の最初のセクション(インデクス = 01), 及びリードアウトトラックの最初のセクション(インデクス = 01)において, 相対時間は0に設定される。それは, 情報トラックの終端まで増加する。

22.3.3.4 ゼロフィールド

このフィールドのすべての8ビットは, “0”に設定されなければならない。

22.3.3.5 A-MIN, A-SEC及びA-FRACフィールド

これらの3フィールドは, 絶対時間を規定する。つまり, 利用者データ領域の開始からこのフィールドが属するセクションまでの経過時間を規定する(21.参照)。それは, 分をA-MINフィールドで記録し, 秒をA-SECフィールドで記録し, 1/75秒の倍数をA-FRACフィールドの00〜74によって記録する。

利用者データ領域の最初の情報トラックの最初のセクションにおいて(直径d7において。8.6を参照。), この絶対時間は0に設定される。絶対時間は, リードアウトトラックの終端まで増加する。

絶対時間は, ディスク上の各セクションの位置を規定し, 番地付けに用いられる。

22.3.4 リードイン領域のQモード1のデータフィールド

リードイン領域において, Qチャネルは, ディスクの目次(TOC)を含む。各Qデータフィールドは, この表の一つの項目を含む。 各項目は, 3個の連続したセクションの中で3回繰り返される。項目は, 情報トラックの利用者データの始点の番地を表示する。それは, ±1秒の精度をもつ絶対時間で表される。項目は, トラック番号ポインタ, 並びにインデクス = 01をもつトラックの最初のセクションの位置P-MIN, P-SEC及びP-FRACから成る。 各項目の制御フィールドは, ポインタが参照する情報トラックの中で使われる制御フィールドと同一とする。 利用者データ領域のすべての連続する情報トラックが表の中に3回リストされた後, (A0), (A1)及び(A2)に設定されたポインタフィールドをもつ, 三つの追加項目が各々3回表に加えられる。 リードイントラックでは, この表全体が連続的に繰り返される。リードイントラックの終端では, 目次はポインタのどんな値でも終了され得る。

リードイン領域のQデータフィールドは, 次のレイアウトをもたなければならない。最上位ビットは, 位置10に記録される。


図17 リードイン領域のQデータフィールド

22.3.4.1 TNOのフィールド

TNOのフィールドは, リードイントラックを識別する00に設定しなければならない。

22.3.4.2 ポインタ, P-MIN, P-SEC及びP-FRACフィールド

ポインタフィールドは, 10進数の値01〜99又は16進数の値のどちらかに設定されなければならない。

00〜99に設定した場含, それは, 情報トラックのトラック番号を規定する。この場合, P-MIN, P-SEC及びP-FRACフィールドは, この情報トラックのインデクス = 01をもつ最初のセクションの位置を, 絶対時間で規定する。

(A0)に設定した場合, P-MINのフィールドは, 利用者データ領域の最初の情報トラックのトラック番号を規定し, P-SEC及びP-FRACフィールドのすべてのビットは, “0”に設定される。

(A1)に設定した場合, P-MINのフィールドは, 利用者データ領域の最後の情報トラックのトラック番号を規定し, P-SEC, P-FRACのフィールドのすべてのビットは, “0”に設定される。

(A2)に設定した場合, P-MIN, P-SEC及びP-FRACのフィールドは, リードアウトトラックの始点を規定し, したがってリードアウトトラックの最初のセクションの番地を規定する。

22.3.4.3 ゼロフィールド

このフィールドのすべての8ビットは, “0”に設定されなければならない。

22.3.4.4 MIN, SEC及びFRACフィールド

これらのフィールド(21.3.3.3参照)によって規定されるリードイン領域の相対時間は, リードイントラックの始点において任意の値に設定され得る。それは, トラックの終端まで増加する。

22.3.5 情報領域のQモード2のQデータフィールド

Qデータフィールドは, ディスクのカタログ番号を含む。 Qチャネルの位置10〜81におけるQデータフィールドの72ビットのレイアウトは, 次のとおりでなければならない。


図18 情報領域のQデータフィールド

22.3.5.1 カタログフィールド

ディスクのカタログ番号N1〜N13は, 国際品番協会EAN(International Article Numbering Association)の品番規格EAN/UPCに従って, 識別番号を形成する2進記法で記録される13桁によって表される。カタログ番号は, 1枚のディスク上では変わらない。

カタログ番号が与えられない場合は, N1〜N13をすべて“0”に設定しなければならないか, ディスクからQモード2を削除しなければならないかのどちらかとする。

22.3.5.2 ゼロフィールド

このフィールドのすべての12ビットは, “0”に設定されなければならない。

22.3.5.3 A-FRACフィールド

このフィールドは, 先行セクションのQチャネルのA-FRACフィールドに指定される時間の連続として, 1/75秒の倍数の絶対時間を含む。これらの8ビットは, リードイントラックにおいて“0”に設定されなければならない。

22.3.6 CRCフィールド

このフィールドは, 制御, Qモード及びQデータフィールドに関して計算される16ビットの巡回冗長検査文字を, 位置82〜97において規定する。このフィールドは, 反転パリティビットを含む。CRC符号語は, 検査多項式によって割り切れなくてはならない。CRCの最上位ビットは, Qチャネルの位置82になければならない。

生成多項式は, 次のとおりでなければならない。

G(x) = x16 + x12 + x5 + 1

附属書A (規定) RSPCによる誤り訂正符号化


A.1 一般

セクタの誤り訂正符号化は, リードソロモン積符号(RSPC)によって実行される。

A.2 入カ

各セクタのバイト12〜2075(14.参照)は, RSPC符号化器に入力される。これらの入力バイト及びパリティフィールドのバイト2076〜2351は, それぞれがRSPC専用の2個の8ビットバイトの1170語に順序付けられる。各語Sは, 2個のバイトBから成る。つまり, 最上位バイト(MSB)の位置にある一つの語, 及び最下位バイト(LSB)にある一つの語から成る。n番目の語は, 次のバイトから成る。

S(n) = MSB[B(2n + 13)] + LSB[B(2n + 12)]
ここで, n = 0〜1169 とする。

RSPCは, バイトへの演算に際して, 2回適用される。1回は, MSBを構成する符号語に対して適用され, もう1回は, LSBを構成する符号語に対して適用される。RSPCの各適用におけるバイトの番号は, そのバイトを含む語の番号に等しい。

A.3 符号化

RSPCは, GF(28)の積符号であり, Pパリティバイト及びQパリティバイトを生成する。GF(28)のフィールドは, 次の原始多項式によって生成される。

P(x) = x8 + x4 + x3 + x2 + 1
GF(28)の原始根は次のとおり。
α = (00000010)
ここで, 右端のビットを最下位ビットとする。

次の記述は, MSBとLSBとについて同一とする。各バイト集合は, 次の行列の中に配置される。

43列は, GF(28)に関する(26, 24)リードソロモン符号語であるPベクトルを示す。Np番目のベクトルは, 次のバイトを含む。

Vp = matrix_a1

24バイトに関して計算された2個のPパリティバイトが, ベクトルの最後に付加される。Vpは, 次の式を満す。

 Hp×Vp = 0
 ここで, パリティチェック行列Hpは, 次のとおりとする。
Hp = matrix_a2

行列の26項を, GF(28)に関する(45, 43)リードソロモン符号語であるQベクトルとする。Qベクトルが行として書かれるとき, 次の行列がバイト集合に対して得られる。

Nq番目のQベクトルは, 次のバイトを含む。

Vq = matrix_a3

(44Mq + 43Nq)は, 1118を法として計算されなければならない。43ビットにわたって計算された2個のQパリティバイトが, ベクトルの最後に付加される。

Vqは, 次の式を満す。

 Hq×Vq = 0
 ここで, パリティチェック行列Hqは, 次のとおりとする。
Hq = matrix_a4

A.4 出カ

セクタのバイト0〜2075は, RSPCの出力において, 変更されない。セクタのバイト2076〜2351は, A.2に与えられる規則に従って, 語1032〜1169のパリティバイトで満たされる。語1032のLSBは, バイト2076に記録され, 語1169のMSBは, セクタのバイト2351に記録される。


附属書B (規定) スクランブラ


EFM符号化器に供給される通常のビットパターンは, 併合ビットがディジタル合計値を減少できないと(附属書Eを参照), 大きなディジタル合計値を生じ得る。 スクランブラは, セクタのバイト12〜2351のビットを規定の方法で変換することによって, この恐れを減らす。 スクランブラの入力ストリームの各ビットは, 最大長レジスタの最下位ビットに2を法としてで加算される。各バイトの最下位ビットが, 入力ストリームの最初にくる。 15ビットのレジスタは, 並列ブロック同期型であり, 多項式 x15 + x + 1 に従って, フィードバックされる。 セクタの同期信号の後, レジスタは, 値0000 0000 0000 0001にプリセットされる。ここで1を, 最下位ビットとする。


附属書B図B.1 スクランブラ


附属書C (規定) CIRCによる誤り訂正符号化


C.1 一般

F1フレームの誤り訂正符号化は, 3段の遅延セクション並びに2個の符号化器C1(附属書C図C.1参照)及びC2(附属書C図C.2参照)から成るクロスインタリーブリードソロモン符号(CIRC)の符号化器によって実行される。 このCIRCは, JIS S 8605に規定されるものと同一とする。

C.2 入カ

符号化器の入力は, 各F1フレームの24バイトから成る。これらのバイトは, それぞれA及びBと示される二つの8ビットバイトの12語に順序付けられる。F1フレームNo.nのバイト0は, W12n,Aと表示され, バイト23は, W12n+11,Bと表示される(附属書C図C.1参照)。

C.3 第1遅延セクション

第1遅延セクションのインタリーブ方式(附属書C図C.2参照)は, 語を二つのグループに分割し, 一つのグループが, F1フレーム時間の2倍遅延する。

C.4 符号化器C2

誤り訂正符号化器C2は, (28, 24)リードソロモン符号を生成する。入力の24バイトから, 4個のパリティバイトQ(C.7参照)を出力する。

C.5 第2遅延セクション

第2遅延セクションは, 一連の28遅延(F1フレーム時間の0〜27D倍)から成る。ここで, Dは4に等しい。

C.6 符号化器C1

誤り訂正符号化器C1は, (32, 28)リードソロモン符号を生成する。入力の28バイトから, 4個のパリティバイトP(C.7参照)を出力する。

C.7 パリティ記号

C1符号化器及びC2符号化器の8個のパリティバイトP及びQは, 次の式を満たす。

Hp = Vp = 0
Hq = Vq = 0

ベクトルVp及びVqを, 附属書C図C.3に示す。

行列Hp及びHqを, 次に示す。

Hp = matrix_c1c2

GF(28)のフィールドに関する計算は, 次の多項式によって定義される。

P(x) = x8 + x4 + x3 + x22 + 1

GF(28)の原始根を次に示す。

α = (00000010)
ここで, 右端のビットを最下位ビットとする。

C.8 第3遅延セクション

第3遅延セクションは, C1符号化器からの一つおきの各バイトに, F1フレーム時間の遅延を与える。

C.9 出力

CIRC符号化器の出力は, 附属書C図C.4に示されるとおり, F2フレームにグループ化される。Pバイト及びQバイトのすべてのパリティビットは, 符号化器を出る前に反転される。符号化器の入力から出力までのバイトの最大遅延は, F1フレーム時間の108倍とする。バイトの最小遅延は, F1フレーム時間の3倍とする。


附属書C図C.1 CIRC符号化器


附属書C図C.2 CIRC復号器



附属書C図C.3 CIRCの列ベクトル



附属書C図C.4 CIRC符号化器出力の構造


附属書D (規定) 8ビットから14チャネルビットへの変換


8ビットバイトの左端のビット及び14チャネルビットバイトの左端のチャネルビットは, 最上位ビットとする。データストリームにおいて, 最上位チャネルビットが最初に送られる。



附属書D図D.1 8ビットから14チャネルビットへの変換


附属書E (規定) 併合ビット


14個のチャネルビットの各グループは, 二つの“1”の間に, 及び連続するグループの間にも, 少なくても2個多くても10個の“0”があるという要求を満たすために, 3個の併合ビットによって前置される。 2個の併合ビットがこの目的に充分である限り, ディジタル合計値(DSV)を最小にすることを可能にするために, 3番目のビットが付加される。与えられた位置でのDSVは, ディスクの開始から指定位置までのチャネルビットの値の合計とする。 信頼性のある半径方向トラッキングを可能にし, HF信号の交差の信頼性のある検知を可能にするために, DSVはできるだけ0に近くなければならない。

併合ビットは, 次のとおりでなければならない。


附属書F (参考) 保存試験


ディスクがこの規格の5.3に規定される保存条件に成功裏に耐えるかどうかを評価するために, 次の二つの試験が実行できる。

F.1

JIS C 0027-1988 環境試験方法(電気・電子)温湿度サイクル(12+12時間サイクル)試験方法

  備考 IEC 68-2-30:1980, Basic environment testing procedures, Part 2: Tests, Test Db and guidance: Damp heat, cyclic (12+12-hour cycle) が, この規格に対応する。

ディスクは, 40 ℃, 6サイクルの厳しさでこの試験にかけることが望ましい。

F.2

JIS C 0021-1995 環境試験方法−電気・電子−高温(耐熱性)−試験方法

  備考 IEC 68-2-2:1974, Basic environment testing procedures, Part 2: Tests, Tests B: Dry heat, Test Ba が, この規格に対応する。

ディスクは, 55 ℃, 96時間の厳しさでこの試験にかけることが望ましい。

F.3

これらの試験から回復した後, ディスクは, この規格のすべての必す(須)要件を満足しなければならない。

F.4

F.3の条件を満足すれば, 記録された情報は, 保存期間の後に利用可能であることが期待できる。