画像電子学会 第7回国際標準化教育研究会    
STD7-4,  2011-01-14        


国際標準化戦略・教育の最新課題
− 国際標準化教育の国際化

Today's topics on education for international standardization strategy
— Internationalization of education for international standardization

小町 祐史

    

Yushi KOMACHI

    


大阪工業大学 情報科学部
Faculty of Information Science and Technology, Osaka Institute of Technology

注: 本予稿は,第7回国際標準化教育研究会の講演課題STD7-4(黒川利明,小町祐史: 国際標準化戦略・教育の最新課題)の予稿の一部である。


1. まえがき

国際標準化戦略を適切に策定し運用することの必要性が認知され,国際標準化の教育・人材育成が注目されて,国内でも数年前からさまざまな対象への積極的な取組みが開始された[1]。

国内における国際標準化の教育・人材育成への取組みが軌道に乗ると,その価値をより多くの人達が知るところとなり,教育を受けるための参加者の多様化が始まり,特に大学では留学生の参加が増えている。その結果,教育内容や教材に対する見直しが求められている。

ここでは,筆者が2006年から担当している国士舘大学の総合知的財産法学研究科における“国際標準化戦略論”[2]の講義を例として取り上げ,国際標準化教育の国際化への検討を行う。

2. 受講生の国際化

“国際標準化戦略論”の受講生における留学生(主として中国,台湾,韓国)の比率の推移を表1に示す。留学生の比率は2009年から急激な増加を示し,しかも留学生の成績平均は全受講生の成績平均をかなり上まわっている。

表1 国際標準化戦略論の受講生における留学生の比率と成績
年度留学生比率(%)留学生の成績平均*全受講生の成績平均*
20060-41.7
20070-51.7
20080-49.6
20092075.046.0
20105782.548.6
*: 100点満点,途中単位放棄は0点とする。

3. 講義内容の見直しの必要性

2010年度の講義内容を図1に示す。1時限90分の講義15回を3日間で行う夏季集中講義である。


図1 2010年度の講義内容
番号 日付 講義内容/課題
1 2010-09-07, 1時限 1. 国際標準化とその必要性
2 2010-09-07, 2時限 2. 国際標準化組織とその活動
3 2010-09-07, 3時限 3. 我が国の標準化行政
5 2010-09-07, 5時限 5. 国内標準化の組織と手続
6. 日本工業規格(JIS)の構成
6 2010-09-08, 1時限 7. 国際規格と他の規格
7 2010-09-08, 2時限 8. 国際標準化の手続
8 2010-09-08, 3時限 9. 標準化における知財の扱い
9 2010-09-08, 4時限 10. 国際標準化会議の実際1(IEC関連会議)
11. 国際標準化会議の実際2(ISO/IEC JTC1関連会議)
10 2010-09-08, 5時限 12. 国際標準化会議の実際3(ITU-T関連会合)
13. 標準化への要求(どんな規格を開発すべきか)
14. 国際標準化活動の評価
11 2010-09-09, 1時限 15. TR, Fast-track, PAS利用戦略
12 2010-09-09, 2時限 16. 標準化に関するアジアの支援と協力
13 2010-09-09, 3時限 17. 翻訳規格原案作成
18. 国際規格原案作成
14 2010-09-09, 4時限 19. ISOおよびIECのNP原案作成
15 2010-09-09, 5時限 20. レポート課題指示

講義の表題となっている“国際標準化戦略論”の戦略とは,個々の団体や国がそれぞれの優位性確立のために用意したspecificなインスタンスではなく,genericな戦略策定スキームである。そうでなければ,“国際標準化戦略論”は講義という公開に近い形式での情報提供にはなじまない。

しかし戦略策定スキームを一般論として表現する[3]ことはかなり難しく,事例紹介の形式での表現にならざるを得ないことが多い。ここに“国際標準化戦略論”の講義内容を見直して,受講生の国際化への対応を検討する必要がある。

特に注意すべき課題

図1の講義内容においては,次の項目において,これらの課題を含む可能性がある。

4. 今後の課題

前述の特に注意すべき課題の幾つかは,講義内容の"なまなましさ"を表わす内容でもあり,これを"無難"にすることは,講義への魅力を減らすことにもなりかねない。魅力ある講義でありながら,受講生の国際化への対応を考慮した講義を目指すことが,今後の大きな課題である。

文献

[1] 小町祐史,“国際標準化戦略論”の講義経験に基づく標準化人材育成の課題,情報処理学会 情報技術標準化フォーラム,2008-07-14, http://www.y-adagio.com/public/confs/miscel/std_forum/std-education.htm

[2] 小町祐史,大学院における“国際標準化戦略論”, 画像電子学会2007年度年次大会, T.2-4, 2007-06-23

[3] 梅田英幸,戦略的国際標準化の仕掛け,JEITA CE部会セミナー,2010-10-07