- PDL からSPDLへ
ページ記述言語(PDL )は,フォーマット済み文書(Final form文書)を記述する言語
であり,プリンタ等の出力装置へ与えるさまざまな文書情報を表示・印刷機能に依存せ
ずに表現する手段として開発された。PDL の導入により,文書生成系の出力が装置非依
存となり,その結果,出力装置への接続性が向上するだけでなく,出力装置機能を考慮
することなく文書生成を行うことが可能になる。つまりPDL で文書を記述することによ
り,例えばモニタ用の数100dpiのプリンタから,グラフィックアート用の数1000dpi の
出力装置にまで対応可能である。
またPDL は,フォーマット済み文書の交換フォーマットとして,通信ネットワーク,可
換記憶媒体(例えばフロッピーディスク,CD-ROM)を介して文書の配布・交換を行い,
異なるシステム間でFinal form文書を受け渡すために有効である。
PDL で記述された文書の流通性を高めようとすると,標準的なPDL が必要になる。そこ
で国際標準化機構 ISO/IECの技術委員会 JTC1/SC18/WG8は PDLの国際規格である標準ペ
ージ記述言語(Standard Page Description Language/ SPDL)の開発に着手した。SPDL
の原案は,当時すでに開発されていた PDLである
Adobeの PostScript と
Xeroxの
Interpress とを原形として作られ,1991年10月の郵便投票によって承認された。
その後,
この投票時の各国コメントへの対処と関連国際規格への整合とに多くの時間を費やし(
文献 1) ,1994年12月に最終テキスト ISO/IEC 10180を完成している。現在,この国際
規格の印刷出版準備作業が行われている。
国内では,SPDLの重要性を確認した通産省工業技術院から委託を受けて,日本事務機械
工業会の文書記述・フォントJIS 原案作成委員会が SPDL の JIS化作業を行っている。
国際規格開発の進行と並行して作業を進めており,既にJIS 原案( 文献 2) が用意され
ている。国際規格の出版を確認した後,直ちに JISとしての出版作業に着手する。
- SPDLの特徴
SPDLは原形となった PDLの特徴を引き継ぐと共に,開発段階で提示された多くのユーザ
要求を満たすように作られ,次の特徴をもつ( 文献 3) 。
- 階層化された文書構造の概念をもつ。
- 用紙選択,印刷済みページの仕上げ処理指定,
文書出力過程全体の制御等を行う文書作製命令を備える。
- 後置記法で演算順序を指定するスタック型言語である。
- インク,マスク,及びクリップ領域で定義する作画モデルによって,
文字テキスト,幾何図形,ラスタ図形を統一的に扱う。
- フォントリソースの規定を分離し,
ISO/IEC 9541(JIS X 4161〜4163 に一致)が定める。
その表記方向に従い,縦組みにも横組みにも対応できる。
- 符号化文字集合の規定から独立している。
- 2種類の交換様式(バイナリ,クリアテキスト)をもつ。
- SPDLへの期待と課題
国内では,日本語対応の問題等があって,未だに支配的なPDL はなく,出力装置の製造
業者,システムプロバイダはその開発企画に際して,頭を悩ますことになる。つまり一
種類だけのPDL のサポートでは限られたユーザにしか対応できず,一方複数PDL のサポ
ートは開発費,ライセンス料の点で負担が大きくなる。
パソコン通信やインターネットを通してフォーマット済み文書の交換の機会が増え,そ
のビューアの開発に際しても,多くの通信環境で合意された標準的PDL が望まれている
。FAX とコンピュータとの接続等においても同様の要求があり,フォーマット済み文書
を扱うインタフェースの問題は通信機業者にも拡大しつつある。
この問題に対する一つの解が,仕様において国際的に合意され,しかもその使用に際し
てライセンスフリーなSPDLの導入である。しかしSPDLは国際規格ではあるが,まだその
実装例が報告されてなく,多くのユーザがその利点を享受するためには,文書交換・通
信の環境でSPDL実装を広く普及させるためのアクションが必要である。
- SPDL普及のための活動
そのアクションの一つとして,日本事務機械工業会・標準化委員会はPDL 開発検討小委
員会を 1993 年 7月に設立し,その小委員会に対して次の活動を指示した。
- SPDL関連ソフトウェアの共同開発の検討
SPDLインタプリタ等の共同開発の可能性を調べ,仕様,
開発体制(開発WGの設置等),開発費用,開発成果配布方法,
スケジュール等を検討する。
- SPDL開発準備
上記の各ステップの進捗,検討結果に応じて,工業会承認の開発体制を整え,
SPDLインタプリタ等の開発に着手できる環境を作る。開発成果物の評価,
配布,メンテナンス等についてもさらに検討を進める。
1993年度の約半年間における委員の積極的活動により,次のことを明らかにした。
- SPDLはこれまでに開発された主要PDL の機能を取り込み,
しかもそれらを上回る新機能を備えている。
- SPDLは,市場での各種 PDLの氾濫を収拾するものとして有効である。
- SPDLには,特定企業へのライセンス,貿易上の障害等の問題がない。
- 米国FIPS, ISO の電子化文書交換等でのSPDL採用の動きがある。
- SPDL処理系の予想される開発工数はかなり大きく,工業会等での
主要部分共同開発
は早期市場立ち上げに有効である。
そこで SPDL 処理系の主要部分共同開発をめざし,委員各社の意向を確認しながら,そ
の実行に必要な次のような細目をさらに明らかにしていく必要を確認した。
- 開発参加組織と費用負担
- 補助金の利用とそれに伴う責任
- 開発の体制とスケジュール
- 開発対象外部仕様
1994年度においては,二つの作業グループ(WG1, WG2)が次のように分担して調査研究
を継続した。
- WG1
SPDL普及のためのストラテジの検討を行った。例えば
- 関連ソフトウェア開発支援の可能性検討
- 普及促進プログラム作成
- SPDL講演会開催
- 実装規約開発グループとのリエゾン
- WG2
開発が望まれるSPDL関連ソフトウェアの基本仕様の検討を行った。
WG2 の活動結果と
しての基本仕様は,平成 6年度報告書( 文献 4) の 5.〜 8. 章に次のような
構成で,まとめられている。
5.テストスゥート
5.1 テストスゥート
5.2 ビューア用テストスゥート
5.3 一般システム用テストスゥート
6.ビューア
6.1 ビューア
6.2 ストラクチャプロセッサ
6.3 コンテントプロセッサ
7.その他の開発検討
7.1 コンバータ要求仕様
7.2 ドライバ要求仕様
8.フォントリソース環境
8.1 フォントリソース環境開発要求項目
8.2 フォント実装規約開発に対する要求項目
主としてWG1 により進められた補助金請求等の活動の結果,具体的なSPDL関連ソフトウ
ェアの開発は小委員会とは独立なコンソーシアムを設立して,そこでの資金調達に基づ
いて行うことが望ましいとの方針を確認した。この内容は,平成 6年度報告書( 文献 4
) の 9. 章に述べられている。
コンソーシアムのような外部組織が設立された場合のPDL 開発検討小委員会の意義につ
いても,多くの議論が行われた。その場合といえど,この委員会の意義がなくなるなる
わけではなく,外部組織とは重複しない活動内容で委員会を継続すべきであるとの意見
が支配的であった。それで,次年度以降についても,この小委員会を継続し,次のよう
な課題を検討することが合意された。
- PDL に伴う最新情報のメンバ間での交換。例えば,ニュースレターの
発行,セミナーの開催など。
- 現在の規格 ISO/IEC 10180に対する拡張要求の業界としてのとりまとめ。
- SPDL利用分野のプロファイルの設定。
- SPDL用のフォント実装規約の検討。
- メンバに共通するSPDL関連のフォントオブジェクトの
登録申請( 文献 5) 。
- 新しい SPDL 処理系の基本仕様の整理,及びその開発組織
(コンソーシアム等)に対する推進要求。
- SPDLの解説書,応用手引き書等の作成。
- SPDL応用の社会的ビジョンの確立,及びそこでの工業会の位置付けの
明確化。
- SPDLシステムの適合性試験の規格検討。
- SPDL 普及のためのその他の検討。